眼球が映した夢

Scene.060

 眼球が映した夢


 “殺された者の瞳には、殺した者の姿が焼付く”

 ロシアに古くから伝わる諺だ。

 今となっては、くだらない迷信だと思える。けれども、僕たちのような人種は、或る意味でロマンチストだ。だから、くだらないジンクスに拘ってしまう。最初の頃は、殺した人間の眼球を抉り出していた。でも、殺しても殺しても捕まらないと解ると、その因習はやめた。

 寒くなり始めた頃の、夕方だったと記憶している。一人の“幼い”売春婦が声をかけてきた。僕らにとって彼女たちは殺しやすい存在だ。売春婦の死体が見つかっても警察はまともな捜査をしない。そう、残念ながら命の価値は平等じゃない。

 首を絞めて殺した。犯しはしなかった。

 気まぐれに下腹部を切り開いて、彼女の子宮を取り出した。それを持って帰って食べたんだ。

 そこから、僕の新しい習慣が始まった。


 これにて、了。

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