野辺送り
Scene.054
野辺送り
厚く鈍重な錫色の雲が、この空を覆っていた。冷たく、乾いた風の中で目を細める。薄くなった視界の奥で、ふわり、と弔旗が風に舞った。遠くに見える葬列は、ゆっくりと道を進んでゆく。
朔風にたわむ柳の枝は、灰色の視野の中で、骸骨の様に軋む。
あの葬列の終わりも、私の最後の姿も、この一振りの枝みたく、空しく簡素なものであろうか。それは、移ろう季節の中で、咲いては散る花みたく、尊いものであろうか。散華する一瞬まで、この庭から、或いは部屋の窓から、誰かの葬列を眺めて、虚しさと、焦りと、恐ろしさを感じることが叶うだろうか。
幾度も雪の積もり具合を尋ねるようなことが恐ろしいと、歌人は嘆く。今の私には、その切迫した想いが理解できる。死にゆく者の怯れが理解できる。
しかし、それすらも叶わぬ葬列の長さは、未だ理解できない。
これにて、了。
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