世界AI戦線

雑草魂

第零章 : 人類史

プロローグ

 赤褐色の人気ひとけのない砂の大地に銃声が響き渡る。


ガン!ガン!


 敵の銃弾が防御壁に当たり、警告メッセージが発される。


『《物理防御壁ぶつりぼうぎょへき》残り15パーセントを切りました。』


 俺は手早く相手と勝負をつけるために相手との距離を素早く詰めスキル《アクセル》を発動させるべく体を捻る。


『【スキル】のモーションを察知しました。』


 音声がなると同時に俺の脳は加速し、右手に持った直剣と捻った体から放つ右斬りで相手の首を跳ね飛ばす。


 ———つもりで放った一振りが空を切る。


 崩れてゆく体勢の中、俺の目は攻撃を仕掛けてくる相手の姿をしっかりと捉えていた。

 武器を持ち変え、切り掛かってくる相手の姿を。


 左足を前に出して、崩れかけの体勢を戻し、相手の攻撃をギリギリで凌ぎ反撃に出る。


「はあ!」


 二手、三手と一手目を取り返すようにたたみ掛ける。がしかしそのどれもが空を切る。

 当たらないことに焦り、りきんだまま蹴り出した足が砂地で滑る。


 相手はその隙を見逃さない。

 倒れかけている俺の急所のいくつかを相手の剣が的確に突いてくる。

 しかし、その攻撃は残った防御壁で守り切られた。


『《物理防御壁》エネルギー切れです。』


 いよいよ跡がなくなった。

 防御壁で守りきれなかったのか、俺の頬に相手の攻撃が擦っていた。鮮血が流れ、痛みが走ると同時に頭に死のイメージが浮かぶ。


 俺は一旦相手との距離を取り自分に言い聞かせる。


「落ち着け、そして油断はするな。」


 戦闘では焦ったやつから死んでゆく、仲間はそうやって死んでいった。

 さっきみたいに、焦って力んだ結果が今だ。


 自分のピンチは相手に大きな油断をもたらす。今なら相手は勝ちを確信しているだろう。

 勝利への確信は同時に大きな油断を招く。


 俺はさっきと同じミスをしないように、相手との間合いを詰める。


 先に俺が右斜め切り下ろしを放つ。

 でも、当たらない。放つ技全てが捌かれる。

見逃すな、油断から生まれる少しの隙を

 心の中でそう囁く。


 しかし、相手は隙を見せない。


 ならどうするのか、、相手の油断を煽るしかない。

 俺はさっきの差し合いのように足を滑らせたふりをして、体勢を崩す。

 追撃してくる相手。


 AIの相手が笑うはずのない相手がニヤリと笑った気がした。


 勝機故の油断が生まれる————


 相手の攻撃の起動を読み、その上で技を放つ。


「ッらぁ!」


 体を捻り《アクセル》を発動させ、無理矢理体を半回転させ今度こそ相手の首を切り飛ばす。


 相手の機体がガシャリと崩れ落ちた。

 俺はその機体を背負い俺は腰のホルダーからキューブを取り出し、真ん中のスイッチを押す。


 目の前に現れた車に背負っていた機体を乗せると俺はすぐにその場を後にした。

 追っ手が来るからだ。

 俺が、人類が今相手しているやつらは人間なんて遥かに凌駕りょうがしている。


 ———ディラスター ———


 それは5年前2065年に人類が完成させた完全な人工知能つまりAIだ。

 開発当初なんの問題もなく他の人工知能と共に人類のサポーターとして勤めを果たしていた、、、表面上は。

 そう、人類は奴らの手の上で転がされていただけなのだ。


 ある学者がかつて言っていた。

「完璧なAIが完成した時、人類は滅びるだろう」

 その通りだった、人類は滅びた。

 と、思われた。


 ある人物が現れるまでは———

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