第35話 棄権

夜になって、僕は誰にも見つからないように、鉄製のはしごまで行き、それを上った。昼の時は、耳としっぽ、爪しか生えていなかったけれど、今は体格も大きくなって、完全なものになっていた。

はしごの一番上まで来ると、僕は、少し幅のあるそこにまたがった状態で座った。ここからは、両国が見えた。


「人狼国の人狼たちって、豪勢な家に住んでいるんだなぁ……。僕たちと全然違う……」


僕は、自分のボロボロの服を見て、少し悲しくなった。下を見ると、人狼たちがはしごの下に集まってきていて、僕を見つめていた。


「こちら、見張り台、エール。壁の上にまたがって座る人狼を発見!」


リーダーの代理を務めるエールから、そう全体に放送があって、念のため、家にいることを喚起したが、時間になってもやってこないことに違和感を覚えた人間たちは、ぞろぞろと真っ暗な家から出てきていた。そして、同じようにはしごの下へと集まってきて、僕のことを見つめていた。僕は、両国の人間たち、人狼たちから光を当てられているせいで、すごく眩しく、目を開けずらかったため、目をとじたまま、真っ黒な夜空に、遠吠えをした。


「ウォーーーン」


そして、僕は用心しながら立ち上がって、大きな声で叫んだ。


「神様!! 人狼である僕は、このゲームを棄権します!! 僕は誰も襲いません!!」


「選ばれた人狼が与えられた試練を棄権すると罰が当たる」というルールがあることは知っていたが、僕はそれを利用して、このゲームを終わらせようとしたんだ。今まで、誰もやったことがないため、違反すれば、僕はこのゲームが終わるのだとそう思ったんだ。


すると、僕は突然、体全身に、大きな手のような感触の見えないもので平手打ちされて、鋭い痛みを感じながら、そのまま人間国へと落ちていったのだった。


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