第194話 一旦の解散

 リーリアの案内でレオンスたちのいる場所に辿り着いた。


「あっ! 来た!」


「ルイも一緒のようだな」


 そこには、スミリアと子供たち、それとレオンスがいた。


「あれはやっぱり二人だったんだ」


「辿ったら見つけれたわ」


 リーリアはともかくスミリアも自然力の波を認識できたようだ。


「ん? やっぱり? 辿ったら? なんのことだ?」


 スミリアとリーリアの会話をレオンスは理解できていない。


 それは仕方がない。


 自然力を認識できなければ、二人の会話を理解できないのだから。


「それより、残りはこれだけか?」


 琉海たちの周りには十数人しかいなかった。


「ああ、後は俺たちとあっちの組が出発すれば、それで全員だ」


 琉海の疑問にはレオンスが答えてくれた。


「なら、俺たちも出よう」


 ここに留まるのが長くなればなるほど見つかるリスクが高くなる。


 そう思っていると、ギードがレオンスに近づいてきた。


「レオンス。次の町に辿り着けよ。死ぬなよ」


「ああ、そっちも無事に辿り着いてくれ」


 ギードとレオンスが固い握手をする。


 ギードと別れ、レオンスは歩み出す。


「目的地は同じなのよね。別々の道で向かうの?」


 自分たちとは別方向へ足を向けるギードたちにリーリアは視線を向ける。


「そうだ。それぞれが別々の経路で目的の町に向かう。どこかの組が万が一捕まっても被害を最小限にするためだ。非戦闘員は別の町に向かってもらっているがな」


「そうなのね」


 ちゃんと考えているようだ。


 レオンスについていく中に子供たちもいた。


 本来は非戦闘員に分類される子供だがスミリアと離れることを嫌がったかららしい。


 スミリアの戦闘能力は惜しいと判断したレオンスは同行を許可したようだ。


 エルフのスミリアなら、少し魔法が使用できるような人間よりも戦闘力は圧倒的に高いのだろう。


 子供が一緒でもお釣りがくると考えたのだろう。


 レオンスの先導で琉海たちは森の中を歩き続けた。


 日が昇る前にできるだけ町から離れる予定のようだが、悪路を選んでいるせいで速度は遅い。


 人が多く使う場所は人通りも多く、野営している者も多い。


 こんな夜間に行動していれば目立つ。


 目立てば追手の手が伸びやすくなるだろう。


 だから、誰も通らないような獣道を選んでいるようだ。


 琉海が最後尾を歩き土の精霊術で足跡を消す。


 ここまですれば、探り当てられることはないだろう。


 小休憩を挟みながらも歩き続け、葉の隙間から朝日が漏れる頃、レオンスは歩みを止めた。


「ここで休もう」


 レオンスの指示で休むことになった。


 ここまでほとんど歩きっぱなしだった。


 皆の疲労もかなり蓄積されているだろう。


 気を張っていたのも疲労を大きくさせていた。


 腰を下ろし一息できると、皆からため息が漏れる。


 正午まで睡眠を取ってから出発するようだ。


 日中でも見張りは必要だという話になり、2人一組で子供を覗いて順番に行うことになった。


 琉海とエアリス。リーリアとスミリア。残りのレオンスは一人で見張りをする志願した。


 特に反対はなかった。


 最悪、レオンスが使い物にならなくても、エアリスが常に辺りを索敵している。


 その点を心配する必要はない。


 それはリーリアもわかっているだろう。


(スミリアはどう思っているかわからないが……)


 こうして日中の見張りを交代で行い、日が真上に来たらまた歩みを再開し日が沈むまで歩き続けた。


 日が沈んだら再び野営。


 そうして翌日も同じように日中は歩き、日が沈む頃には目的の町付近まで来ていた。


「今日はここで野営して町へは明日向かおう」


 作戦の全貌を知っているレオンスに従い、琉海たちは野営して夜を越した。

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