第174話 修練場
琉海たちがスミリアの家で待っていると扉が開いた。
姿を現したのはスミリアとルノーとレオンスだった。
(「彼らがそうか?」)
(「ええ」)
レオンスとスミリアは小声でやり取りをし、確認を終えるとレオンスが一歩前に出た。
「君たちか。反乱軍に入りたいと言っているのは」
レオンスが琉海たちに聞く。
「あんたは?」
琉海は無精髭にボロボロのマントを羽織る男に視線を向けた。
「俺はレオンス ・クレイダーマンだ。一応、反乱軍をまとめている。君たちは?」
「俺は琉海。こっちにいるのはエアリスとリーリアだ」
「なるほど。戦力になるって聞いたが、何ができる?」
レオンスは琉海たちをジッと見る。
吟味されているのだろう。
「戦闘全般なら何でもできる。敵を倒すことなら、なお得意だ」
「ほう。自信はあるみたいだな」
数秒ほど琉海と視線を合わせていると、最初に視線を逸らしたのはレオンスのほうだ。
「中々、肝の据わった奴だな。嘘も吐いてなさそうだ。とりあえず、度胸は問題ないようだ」
レオンスは無精髭を触り思慮する。
「だが、戦闘が得意だというのを鵜呑みにするわけにはいかない。こちらも把握できていない戦力に背中を預けようとは思わないんでな」
レオンスの言い分はわかる。
琉海も後ろから刺されたくはない。
「ああ、それは同意だ。それで、どうするっていうんだ?」
「そうだな。こればっかりは実際に見せてもらうしかないな。ルノー、修練場を空けるように伝えてくれ」
「いいのか? こいつらを修練場に入れて?」
「そこは仕方ないだろ。広くて騒いでも見つからない場所はあそこしかない。それにスミリアの知り合いだ。ある程度は信用できるだろ」
一瞬、レオンスが琉海に視線を向けた。
視線で「そうだろ?」と聞かれているようだったから、琉海は頷いた。
「わかった。団長がそこまで言うなら、修練場を空けてくる」
ルノーはそう言って家から出ていった。
「というわけで、付いてきてもらおうか。君たちがどれだけ戦えるのか見せてもらおう」
レオンスの先導で付いて行くことになった琉海たち三人。
同行者は推薦者のスミリア。
子供たちは家でお留守番だ。
反乱軍に所属している近所の人に子供たちを見てもらうようにスミリアが頼んでいたので、心配はないだろう。
最後に子供たちに勝手に出て行かないように釘を刺していたのも聞こえていたから、盗みに出かけるなんてこともしないだろう。
そんな琉海たちがレオンスに連れていかれたのは、大きな家屋だった。
しかし外見は蔓に覆われた廃屋。幽霊屋敷と言われても不思議ではない外観だった。
「ここは?」
「ここはまだイラス王国内の領地だった時の貴族の屋敷だ」
レオンスはその貴族の屋敷の中に入っていった。
後を追い付いて行くと、下へ向かう階段が見えてくる。
(地下に向かうのか?)
レオンスは何も言わずに階段を下った。
数分ほど下ると、一気に空間が開けた。
一番最初に目に入ってきたのは数十段の階段の下にある開けた場所。
注目を浴びせるためなのかライトアップされた中央舞台。
そこはまるで闘技場の舞台のようになっていた。
闘技場の舞台の周りを囲うようにひな壇のような段差がいくつも配置されている。
おそらく、これは観客席なのだろう。
「これは……」
「ここに住んでいた貴族は裏で闘技場を経営していたみたいで、その場所を我々が使わせて貰っている」
「こんな場所がルダマン帝国に見つかっていないのか?」
「ここに来るまでの階段に認識阻害の術式が張られていたみたいでな。スミリアが来なければ我々も見つけることはできなかった場所だ」
認識阻害は相当作り込まれていたおかげか、ルダマン帝国がこの町に乗り込んだ時に見つけることはできなかったようだ。
そして、中央から離れた屋敷だったため、スラム街の中に朽ちていく屋敷となった。
それが功を奏し、反乱軍の修練場として活用されているようだ。
「ちなみにその貴族は?」
「すでに死んでいる。好き勝手に使っても問題はない」
話によるとルダマン帝国との戦争時に戦死したようだ。
「いい噂を全く聞かなかった貴族だ。何も思う必要もない」
レオンスの案内で琉海たちは段差を下りて闘技場の舞台に向かった。
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