第171話 エルフの村壊滅
家内の中央には大きな丸テーブルと八脚の椅子が置かれている。
他には何も置かれていない簡素な内装だった。
スミリアに案内され、テーブルを囲むように置かれた椅子に座る琉海たち。
琉海たちが座ると、スミリアたちも椅子に腰を下ろした。
財布を盗んだ少年と少女も同じように座る。
リーリアがその二人に視線を向けると、スミリアが口を開いた。
「彼女たちは私を助けてくれたご夫婦の子供たちよ。私がエルフであることも知っているわ。だから、警戒しなくて大丈夫よ」
スミリアが言い終わると視線でそちらは大丈夫なのかと琉海たちを見る。
「そう。こっちも問題ないわ。彼らは私の命の恩人だから」
両者とも同席者がいても問題ないことを確認すると、話を再開した。
「まず、私たちの話からするわ」
スミリアがこれまでの経緯となぜこの町にいるのかを話してくれた。
スミリアが住んでいたエルフの村は森の中にあり、
作物と動物を適度に狩って生計を立てていた。
森で取得できない嗜好品などは町に出かけて入手していた。
買い出しの時は必ず魔道具で姿を変えて数人のエルフで町に行っていたそうだ。
しかし、ある日、正体がバレたのかエルフの村に人間の兵が押し寄せてきた。
エルフの村にも結界があったが、それも突破されたようだ。
エルフは人間の兵に抵抗してしたが、兵士の持つ武器が特殊だったため敗北した。
ほとんどのエルフは囚われたようだ。
スミリアは村長に逃がしてもらったが、何人かの兵士が追いかけてきた。
振り切ろうと頑張ったようだが、足に怪我を負い追い詰められてしまう。
そのとき、元冒険者の商人が通り掛かって助けてくれた。
元冒険者の商人は夫婦で子連れだった。
スミリアは一緒に行動することを断ったが、商人の夫婦はスミリアを心配して説得してきた。
根負けしたスミリアは夫婦と一緒に行動することになった。
これが間違いだった。
数日が経って追手もいないことから、スミリアは警戒心を緩めたころの夜に兵士たちから襲撃を受けた。
魔道具を使って気配を消していたのか、突然のことだった。
一瞬で窮地に立たされた夫婦はスミリアに子供を預け、兵士を迎え撃つことになった。
子供を任されてしまったスミリアは子供たちが安全な場所まで離れるしかなかった。
ある程度、離れるとスミリアは夫婦の二人が気になった。
子供たちには隠れているように言い聞かせて、様子を見に引き返した。
すると、夫婦の二人が捕まっている姿を見てしまった。
見間違いでなければ夫妻の女性と目があった気がした。
その時の口の動きは――
「子供たちをお願いします」
スミリアはひとりで飛び出そうとしたが、ひとりではどうすこともできないと本能が囁いた。
ため息を細く吐き、冷静さを取り戻して踵を返した。
その後、子供たちと合流して町を目指したようだ。
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