第138話 属性の魔力
人間に限らず、生物には神経が通っている。
主に体を動かす神経が――
医学が進歩している元の世界を知っている琉海の方がこの辺は詳しいかもしれない。
だが、ここは異世界。
異世界独自の解釈がある。
そのひとつは魔力が存在するということ。
そして、それは魔力が通る神経もあるということだ。
地球では魔法が存在しないため、そんな神経があるなんて提唱する医学はない。
しかし、この異世界では存在するようだ。
魔力神経は体を動かす神経と同じように全身に巡っているようだ。
その神経のおかげで、魔法を扱うことができるそうだ。
だが、一番細い神経である属性を司る神経は違うようだ。
魔力を通る神経の周りに細かい神経があり、それが属性を司る神経として機能している。
この神経に得意な属性の含まれた『第二の魔力』と言われる属性魔力が通り、魔力神経を通る魔力と交わることで様々な属性の魔法を扱うことができるようになる。
ただ、琉海の体はエアリスに複製してもらった部分と本来の自分の体が混じり合っているため、結合部にズレが生じているようだ。
そのズレで神経の結合ができておらず、属性を含む魔力が遮断されてしまっているとのことだった。
この原因を解消することができれば、属性を持つ精霊術も扱うことができるようになるようだ。
「それが、ルイ様が属性を扱った精霊術ができない原因です」
一通り説明し終わったマルティアはそう締めくくる。
「それは治せるのか?」
琉海はエアリスに視線を向けた。
「難しいわね。体としては問題なく複製できていると思うけど、そこまで私は見通すことができないわ。なんせその属性を司る神経についての知識がないもの」
エアリスはあっけらかんと言った。
《創造》は想像したものを創造することができる能力だ。
想像したものが詳細に想像できているほど、この世界に定着して顕現する。
そして、知識は強い存在感を補うことができる。
不安定な体を複製するわけにはいかないエアリスは知識のないものを複製しようとはしない。
「無理もありません。このことを発見した者は大昔に亡くなられていますし、知っている者はごく少数のハイエルフだけですから」
「あなたは知っているみたいね」
「はい。知識はあります。先ほど確認してみた感じですと、もしかしたら、ルイ様の現状を解消することも可能かもしれません」
エアリスの質問にマルティアはそう答える。
「治せるんですか?」
「やってみないとわからないですが、できるかと思います」
琉海も自分の体に欠陥があることを知り、治せるなら、治しておいた方がいいと思った。
「なら、お願いできますか」
「わかりました。少し準備しますので少々お待ちください」
マルティアはそう言って別の部屋に向かった。
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