第136話 魔女の過去と現状
この森にマルティアが住み着いたのは、200年ほど前のようで、その頃はもっと森が多く住みやすい場所だったそうだ。
次第に時間が流れると、森が切り開かれていった。
すべての範囲を守ることは難しかったため、ある程度は許していたのだが、勢いは止まらず、森のすべてを切り開こうとしてきた人間たちにマルティアは警告をした。
それでも入ってこようとする者たちには、力で黙らせることもしてきたようだ。
それが、森に住む『魔女』の噂の経緯だった。
マルティアが魔女と呼ばれるようになった頃、昔馴染みのハイエルフから一人の娘を預かることになった。
それがリーリアのようだ。
その後も、ちらほらと続いた森への侵略行為。
ただ、最近になって森へ侵入してくる勢力が強く、過激になってきたようだ。
辛うじてリーリアのみで応戦できているが、それも時間の問題のようだ。
「先日は、50人ほどの団体がこの森に襲撃してきました。次はおそらく数百人規模の勢力でやってくると思われます」
「完全武装でね」
リーリアが「嫌になるわ」と言ってお茶を口に含む。
リーリアの余裕そうな態度とは対照的に、マルティアの表情は次の戦闘に危機感を覚えているようだ。
「それで、俺たちを先遣隊か何かと勘違いして襲ってきたというわけか」
「はい。申し訳ございません」
マルティアは深く頭を下げた。
「いや、もう謝ってもらったから、それはいいんだが、その侵入してこようとしているのは、どこの国の奴かわかっているのか?」
「はい。おそらくルダマン帝国かと思います。ルダマン帝国の紋章が入った武器が多くありましたので」
なるほど、ルダマン帝国か。
これから向かおうとしている国がこの森を侵略しようとしていると言うことか。
面倒事ではあるが、捕まえた人間から色々と話を聞くこともできそうではある。
帝都に向かうつもりだったが、侵入前に情報を持っていても損はないだろう。
最悪なのは、情報なしで見当違いの場所を探し、敵に対策を取られることだ。
それだけは避けなければならない。
数瞬の黙考後、琉海は決断する。
「そういう話なら、俺らにも関係ある話だ。その敵の侵入者を防ぐのを手伝おう。そのかわり、敵の一人から話を聞きたいから捕らえさせてほしい」
「そんなのダメよ。一人残したら、またうじゃうじゃとやってくるんだから」
「リーリア、ルイ様の話を最後まで聞きなさい」
マルティアがリーリアの言葉を遮る。
「うう……」
他にも色々言いたかったようだが、リーリアは唸るだけで、言葉を発することはしなかった。
「もちろん、聞きたいことを聞ければ、生かしておく必要はない。後はそっちの好きにしてかまわない」
「ありがとうございます」
マルティアは次の戦場に多少の光が見えて安堵に息と共に礼を述べた。
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