第135話 隠れ家

 マルティアに案内された場所は森の中腹だった。


 森の中を進むとひときわ大きな大木が聳えていた。


「こちらです」


 マルティアが示すのは、大木の近くにある木造の家屋だった。


 家の中に入ると薬草の香りが充満していた。


「いい場所ね」


 エアリスは気に入ったようで家の中に入っていく。


 エアリスが気に入るのも頷ける。


 エアリスの家もこんな雰囲気だった気がする。


「ありがとうございます。そちらで寛いでください。お茶をご用意しますので少々お待ちください。リーリア、手伝ってちょうだい」


「はーい」


 マルティアはリーリアと一緒にキッチンに向かった。


 琉海とエアリスは内装を見る。


 薬草や古めかしい本。フラスコのような容器などが見える。


 エアリスは興味深げに色々と眺めていた。


 少しすると、マルティアとリーリアが2つずつカップを持ってきた。


 各々の席にカップを置く2人。


 そして、4人が席に座るとマルティアが口を開いた。


「それでは何から話しましょうか」


「私が精霊だとどうやってわかったの?」


 エアリスが無遠慮に聞く。


「それは、上級精霊と会ったことがあるからです」


「へえ、どこで見かけたのかしら」


 エアリスが興味深げに聞く。


「残念ながら、今はどこにいらっしゃるかわかりません。私が会ったことがあるのは、600年ほど前のことですから」


「600年前……ッ!?」


 あまりにも果てしない年数に琉海が驚きの声を上げる。


「それじゃ、わからないのも無理はないわね」


 エアリスは落ち着いているようだ。


 まあ、300年以上この世界に存在し続けているエアリスにとってはそこまでの年数

ではないのかもしれない。


「はい。現在も存在しているのかもわかりません。ただ、その特有の雰囲気をエアリス様からも感じられたので、もしやと思いました」


「なるほど……」


 エアリスでも隠し切れない部分があったということだろう。


「まあ、エアリスの正体を見破ったのは、いいが、なんで俺たちを襲ってきたんだ?」


 琉海はそう言ってすまし顔でお茶を飲んでいるリーリアに視線を向けた。


 琉海の視線に気づいたリーリアはびくっと肩を震わせる。


 それでも、リーリアはお茶を飲む手を止めたかった。


 数瞬の沈黙にリーリアの目が泳ぐ。


 そんな中、口を開いたのはマルティアだった。


「申し訳ございません」


「いや、別に謝ってもらう必要はないんだが、どうしてあんな襲撃するようなことをしたんだ」


 琉海やエアリスではなかったら、ハチの巣になっていた。


 まあ、琉海たちも引き下がるように言われても突き進んだのは、言い訳のしようもないのだが。


 それにしても、過剰な防衛に思えた。


 琉海の質問にマルティアは神妙な表情になる。


「あ、あいつらのせいよ」


「やめなさい。この方たちには関係のないことよ」


「でも……」


 マルティアとリーリアが醸し出す雰囲気にきな臭さを感じた琉海。


「わけありっぽいな」


 琉海はこれ以上踏み込むのは面倒だと思い、深く聞こうとはしなかった。


 すると――


「話してみなさい。関係ないかどうかは、私たちが決めるわ」


 エアリスが踏み込んで聞こうとする。


 琉海は内心でため息を吐くも、マルティアが話し出すのを待つ。


「わかりました。リーリアが過剰防衛をするようになった経緯をお話しいたします」


 マルティアはそう言って説明してくれた。

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