第30話 噂
ギルドを離れ、琉海が向かったのは、洋服屋。
近くの出店で串焼きを売っていた恰幅のいい男に、洋服屋の場所を教えてもらった。
琉海は串焼きを食べながら洋服屋に向かった。
串焼きを食べ切ったころに目的の場所に辿り着いた。
中はそこまで広くなく、基本的に古着を扱っているようだ。
どれも若干薄汚れていたりする。
これが、この世界での当たり前なのかもしれない。
綺麗な服は貴族が着て、古い服を平民たちが着る。
琉海は古着を着ようとは思わず、一通り見たら店を出た。
そして、人気のない路地裏に入り、精霊術を行使する。
エアリスのオリジン『創造』。
うまく服を複製できた琉海。
両手には黒の上着とズボンが握られていた。
洋服屋で平民の衣服を元に作ったものだ。
「いい感じにできたな」
琉海は着替えてみる。
サイズも合っており、動きに支障はない。
全身、黒一色になってしまったが、別に問題ないだろう。
琉海は再び、町の散策に乗り出した。
目的はもちろん、アンリの情報だ。
綺麗な鎧を着た者を筆頭にした集団がこの町で見かけなかったか出店の人に話しを聞いたり、昼から飲んでいるおっさんに聞いても見たが、情報はなかった。
その都度、商品を買ったり、奢ったりしたため、所持金は減った。
「この調子で金を使っていったら、あっという間になくなっちまうな」
琉海は少し軽くなった巾着袋を軽く揺らす。
やっぱり金を稼ぐしかないか。
夕方になると、冒険者っぽい人が増えてくる。
依頼を終えて帰ってきたのだろう。
冒険者たちは会話をしていた。
しかし、どの冒険者も話題は一つだった。
『賊狩りがこの町にやってきている』
この話は琉海もアンリの情報を集めたときに、よく聞いた話だった。
なんでも、半年前ぐらいから、この周辺の町や村で話題になるようになったらしい。
『賊狩り』は、ローブで全身を隠しており、男か女か判別できないようだ。
正体がわからないことが話題の一つとなっているが、他にもあった。
『賊狩り』は町や国で懸賞金がかかった賊を片っ端から捕まえており、その『賊狩り』が近くに来るということは、懸賞金のかかった賊が近くにいる証となる。
それは冒険者にとって朗報であった。
『賊狩り』の近くには金がある。
誰が言い始めたのかはわからないが、冒険者の間では名言になっていた。
近くに金があるとわかっていて動こうとしない冒険者はいないだろう。
おそらく、今日の昼ごろから、この町に来ているという話題が広まり始めた。
どっかの商人がこの町にやってきて、広まったのだろうと昼間に中高年のおっちゃんが教えてくれた。
冒険者たちは依頼の帰り道で知ったのだろう。
彼らは明日からの予定を話したり、懸賞金リストを見て誰なのか特定しようとしている者、はたまた賊狩りの正体を突き止めようと考える者など様々なグループがいた。
琉海はそんな道行く人たちの話を聞きながら、宿に戻るのだった。
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