第22話 隊長と副隊長
「隊長、ここにいたんですか」
副隊長は隊長が担ぐ少女に視線を一瞬向けた。
「そっちはどうだ?」
「問題なく殲滅しました。この村に生き残りはいません」
「そうか。んじゃ、これをよろしく」
隊長と呼ばれた鎧の男は、担いでいた少女を副隊長に渡す。
「これは村の生き残りですか?」
「ああ、だが、それは特別らしい。丁重に扱って国王に渡せっていう命令だ。殺したりするんじゃねえぞ」
管理は任せたと暗にいう。
「それを傷物にして首を飛ばされる奴がいるのは別に構わねえが、俺の評価を落としたりしたら、全員殺すと伝えておけ」
語気に副隊長は固唾を飲み、姿勢を正した。
「わかったら、さっさといけ」
「は、はッ!」
副隊長は胸に拳を当て、一礼して去る。
隊長の言葉は脅しではないことを知っているからこそ、副隊長は即座に動いた。
この部隊の隊長――ディルクス・アルフォスは何度も部隊を全滅にしている。
そのどれもが、敵によってではなく、ディルクスによるものだ。
原因はどれも軍規違反に基づくもの。
紙面で見れば、統率を重んじているように思うかもしれないが、それは全く違う。
ディルクスはただ強い奴と戦いたいだけ。
だが、自由に戦うことができるのは軍の中でも、絶大な実績と権力、力が必要になる。
ディルクスはそれを理解しているから、部隊での違反行為には、連帯責任で潰す。
潰す相手を間違えれば、首を飛ばされたのは、ディルクスだったかもしれない。
それでも生き長らえたディルクスは、結果を出し続けた。
そんなディルクスを上層部が殺すのは惜しいと判断した。
強さを証明し続けたことで誰も手を出すことができないほどにまでなってしまい、ディルクスの行いは黙認されるようになった。
ディルクスが部隊長になってからというもの、多くの部下が死んでいる。
最初は噂程度だったため、ディルクスの部隊に配属されても所詮は噂だと信じず、悪さをする者もいた。
現在では、そんな馬鹿はいない。
真実だと知ったからだろう。
副隊長であるアイスト・ミリタは長く一緒の部隊で行動している。
アイストが配属されてからは、部隊が全滅するようなことはなくなった。
それもアイストが部隊を統率するようにしてきたからなのだが、それも完全である保証はない。
部下が何かやらかせば、自分も殺されるのは必至。
任務が終わるまで、気を緩めるわけにはいかないと、アイストは自分に言い聞かせた。
村を襲った者たちは、周辺の確認を終えると、興味を引くものはなかったのか、すぐに村を離れた。
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