第4話 生死の境

 闇夜の空に埋め尽くすほどの流星が流れ、世界を震撼させた。


 そして、その一本の光が森林の中へと落下した。


 静かな森に轟音が響き渡り、野生の動物たちが逃げ惑う。


 轟音の発生した場所には大きなクレーターが作られていた。


 人が住んでいる気配のない森に、一人の少女が轟音の発生源へと近づいた。


 大きなクレーターの中心地には1人の少年が横たわっていた。


「珍しいわね。こんなところに人間が落ちてくるなんて」


 少女は落ちてきたのが人間であることを確認すると、傍まで近づき首に手を添えて脈を計る。


 小さな鼓動が指に伝わる。


「これだけの傷で生きているなんて、生命力の高い人間なのね」


 服はボロボロ。


 体の至る所に傷。


 腹部には大きな傷を負っている少年。


 この傷は重傷だ。

 

 今も傷口からは血が流れ、命の灯火を削っていた。


 だが、微かに息はある。


 とはいえ、このままでは、すぐに死んでしまうだろう。


「これは、運命というものなのかしら。ただ、チャンスではあるのかもしれないわね」


 そう呟くと意識を失っている少年の顔に少女は顔を近づけた。


 受け答えはできないだろうと判断した少女は額と額をくっつける。


(意識のやりとりさえできれば十分よ)


 長く綺麗な黒髪が肩から流れ落ち、土で汚れてしまうが、少女はそんなことを気にしない。


「答えなさい。このまま死を受けいれるか、生にしがみつくか。あなたはどちらを選ぶかしら」


 意識のない少年に答えることはできない。


 そのはずだが、少年の口が開いた。


「い……き……たい……」


 声になっているかわからない掠れた声だが、少女にはしっかりと聞こえたようで、口角を上げた。


「なら、受けいれなさい。そうすれば、あなたは生きながらえる」


 少女はそう言って、少年の口に唇を重ねた。


 清涼な光に少年と少女は包み込まれた。

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