修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤亮
1章 異世界突入編
第1話 プロローグ
村に襲撃者が現れた。
村全体から悲鳴が聞こえる。
逃げ惑う村人たちを襲うのは同じ人間。
襲う側の人間は煌びやかな武装を身に着けている。
鎧を着た男たちが馬に騎乗し、剣や槍を振り回す。
村人たちは、無残に切り殺されていた。
そんな村で一人の少年が襲撃者の中で一際装飾の多い鎧を着た男と対峙していた。
男の顔は、下卑た笑みを浮かべ、少年に剣を向ける。
「ほら、その女を早くよこせ」
剣先をちらつかせて、少年を脅す。
だが、少年は少女を庇うように一歩前に進み、動こうとしない。
「自分の命とその女のどっちを選ぶ。いまなら、お前の命は助けてやらないこともないぞ」
男が少年に選択肢を与えるが、そんな選択肢はないだろう。と少年は心の中で呟く。
大体こういう展開で自分の命を選んだら殺される。
直感がそう囁いていた。
だが、少年は男を退ける術を持っていなかった。
「少しは穏便に済ませようと思ったんだが、返答がないなら――」
男の声と同時に自分の胸に異物が入り込む感覚を覚える。
「え……?」
男は少年の胸部へ剣を突き刺していた。
少年には男の動きが見えなかった。
気づいたときには、自分の胸を剣が貫いていた。
剣の刺さった箇所から赤黒く服を滲ませる。
「がはッ!」
内臓から逆流してきた血を口から吐き出す。
「――――ッ!」
後ろにいた少女はその光景を見て声にならない悲鳴を上げた。
男は乱雑に少年の体から剣を抜き目的の少女へ近づく。
支えを失った少年の体は倒れた。
少年が見た最後の光景は男に腹を殴られ、気を失い男に担がれて連れ去られる姿だった。
少年こと、
徐々に力が抜けていく。
死が忍び寄ってきているのがわかった。
琉海は自責の念に駆られる中、脳裏に浮かぶのはこの世界に来る前のことだった。
これが走馬灯というやつなのだろう。
琉海は自分の記憶の海に沈んでいく。
修学旅行のはずだったあの時のことを思い浮かべながら。
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