五話 さ、マリーナへ!

リナの店〜


カランカラン


「やっほー、リナさん。また来たよ〜」


「いらっしゃいませ皆さん。何かお求めですか?ここに無ければ、ソウルの調整で色々と作りますが」


「オリジンの時にソニアが使っていたポーションはリナの手作りなんですか?」


「はい。ここで売っているものは全て私の手作りです」


「これと、あれと……」


ソニアとカナが買っていくポーションを選んでいる。


(どんだけ買うんだ…)




「お買い上げありがとうございます」


「そうだ、せっかくだし旅行券が一枚余ってるんだった。5枚あって…」


「おいおい、カーマはどうするんだ?」


咄嗟に聞くライキ。


「俺は背後霊のような者だぞ。風呂に入れないし、他の人からは大抵の場合見えない」


「….なので、リナさんもどうですか?」


「私は店番をしないと…」


「店番なら任せたまへ!」


(店裏から影が…)


「…オリズさん!?」


「いや、なんで帽子が喋ってるんだよ!?」


驚くライキ。


「ワイは、魔帽子のオリズ。リナの元私物なんや」


(見た目は怖そうなのに独特な喋り方でイメージとなんか違う…)


「まだアンデッドとゴーストの遺伝子が宿るまで、私はカナさんと同じ魔法使いでして、その時からずっと被ってた帽子に意志が芽生えたんです。街の人曰く、古くから伝えられている事ですが、帽子に意志が芽生えると一人前の魔法使いらしいです」


『ジーッ…』


「ん?…そ、そんな目で、私の帽子を見ないでくださいよ!まだリナさんと比べて熟練度が違いすぎますし…」


帽子で顔を伏せて喋るカナ。


「オッホン。ワイは、この店の本体やでな。移動もできるし、リナがいなくても何とかなる」


「移動!?」


「店ごとテレポートするんや。まあ、安心してリナも行ってきたらええやん。疲れとるやろうし、たまには休暇も必要じゃろ。楽しんできなさいな」


「…な、ならお言葉に甘えて疲れを癒しに行ってきますね」




店の前〜


「ていうか、オイラ達が乗る馬車ってどこにあるんだったっけ?」


「ここから確か、東の方角のワイルド街ですね」


「なあソニア、馬車があるか見てこいって」


命令したかのようにライキが言う。


「いやよ、こんな事でアタシの音速を使いたくないわ。ここは皆、平等にジャンケンよ!」


「仕方ないなあ」


『ジャンケン…ポン!』


「あ…」


シュン


「行ってしまった。数えてようぜ」


『いーt…』


「只今〜」


「早!」


「あったわ。予約してきたから、さっさと行くわよ」




10分後〜


「着いた〜…馬車はあれか?」


「乗りましょう…って一台三人乗りですね」


「三人ずつで分かれるしかないな」


「まあ、とりあえず一旦乗りたい馬車の方に指を差してくれ」


「せーの」


全員が前の馬車を指差した。


「何で皆、前の馬車なんだ?俺もなんだけど…」


「馬を見てみたら分かるぞ!あっちのほうがゴツいっていうか優秀な馬な気がする!」


(同意見だ。後ろの馬はなぜか、言っちゃ悪いがひょろくて弱そう)


「また、ジャンケンか…」


『ジャンケン…』


『ポン!』


「え、一人負け…」


「あらら、ついてないですね…ささっ、続けましょう」


(切り替え早っ!)


『ポン!』


「やりました!一人勝ちです!」


「運がいいわね。アタシもせめて三位までに…」


『ポン!…ポン!…ポン!』


(中々決まらない。この前の指スマみたいにならなきゃいいけど…)




5分後〜


結局カナ、リナさん、カーマ。俺、ライキ、ソニアに分かれた。


「一人勝ちした私は遠慮なく前に乗りますね!」


「すいませんね、勝ってしまったもので。失礼します」


「残念だったな。ジャンケンの敗北者達よ」


「まんまと煽られたわ…ジャンケンって勝ち方があんまり分からないのよね」


(勝ち方も何もほぼ運要素が関わってくると思うが…)




馬車の中〜


「ねえ、ユウ。ジャンケンに勝つコツとか無い?」


「それ、初手で一人負けした俺に聞くことか?」


「しょうがないじゃ無いの。この馬車にいる三人は、負けグループなんだし」


「負けグループって何か雑魚キャラチームみたいだな…」


「お〜、だが景色を眺めるのにはちょうど良い速さだぞ」


「本当だ。でも、少しずつカナたちと離れていっている気が…」


ユウ達の馬は、景色を見るのには最高だが馬の歩くスピードがあまりにも遅すぎるのだ。


「馬車のおっちゃん!この馬をもう少し速く出来ないか?」


ライキが運転手に問いかける。


「あるにはあるんですが…」


「じゃあ、やってくれ!」


「…ならしっかり捕まっていてください」


(ん、嫌な予感が…)


パチン!


「ライキ…」


(遅かった)


「ヒヒ〜ン!!」


「うわあああああああ!!」


ムチを打たれた途端、馬が暴れ出した。


「おじさん、この馬いつ止まるんですか!?」


「いつ止まるか私にも分かりません!こいつの気分なので。言えることは一つ…しっかり捕まっていてくださいね!」


「しっかりって…俺達、もう体半分窓から出てるんですけど!」


あっという間にカナたちの馬車を抜かしていく。


「うわっ!砂ぼこりが。あれは…ユウ!体半分窓から出ていますよ!ライキも天井にしがみついて…てか、あっという間に抜かされましたね」


「あっちの馬の方が速かったようですね。当たりだったんでしょうか?ユウさん達には先に行っててもらって、私達はゆっくり行きましょう」


「そうですね。リナさんの言う通りにします」


「やれやれ、大変なことになりそうだな…」




一方、ユウたちは…


!!ドタドタドタ!!


「止まんねえええ!!もう、腕が辛い!!」


「おえ〜、気持ち悪い。吐きそう」


「酔い止めの魔法、カナにしてもらっただろ?」


「酔いやすい体質だからこれはまだマシな方よ。うっ、また気持ち悪くなってきたわ」


「外出るか?気持ち悪いなら自分で走ったらどうだ?」


「ますます、辛くなるじゃないの!」


ガタン!


「うわっ!」


ソニアが馬車から落ちてしまった。


「大丈夫か!?」


「間一髪ね。受け身がとれてよかったわ」


スタタタタタ…


30分後〜


「ねー!これいつまで走っていればいいの!?」


「もう少しの辛抱だ。頑張ってくれ」


「頑張れって…流石にアタシでもキツイんだけど!?」


「おっと、よそ見してはいけない。俺も落ちてしまう!」


「いっその事、アンタも落ちなさいよ!」


 グイッ!


「あ!おい、やめろー!足を引っ張るな!ただでさえ腕が限界なんだぞ!」


「おっちゃん!こいつに、状態変化技とか効いたりするか?」


「どうでしょうか。一か八か打ってみるのも良いかもしれません。私が許可します」


「だったら…」


さっきまでしがみついていたライキが何とかバランスを保ちながら…いや、電磁浮遊しながら天井から繰り出した。


「!プラズマバインド!」


「あ、ライキ。勢いはつけるなよ」


「弱〜」


(勢いをつけるのかと思ったら弱くしてくれた。良かった)


「グー、グー…」


眠ったが、まだゆっくり歩き続けている。


「はぁ、はぁ…何とか持ち堪えたわ…うっ、やっぱり気持ち悪い。吐いてきていい?」


「なら、この袋どうぞ」


「ありがとうございます」


そう言うとどこかへソニアは行ってしまった。


「はぁ、はぁ。腕、死ぬかと思った…」


「もうすぐ夜になりますので、ここでちょっと野宿しましょうか?お詫びと言っては何ですが食べ物やテントなどはこちらで用意させていただきますので」


「そんな、良いんですか?ありがとうございます!」




日没後〜


「あれは、カナ達の馬車か?」


「あら、ユウさん。どうかしたんですか?」


リナが尋ねる。


「今夜はここで野宿らしいです。運転手のおじさんが色々と準備してくれたからそれを手伝っている感じで…」


「わざわざ、すみませんね。手伝わせちゃって」


「大丈夫ですよ。むしろこっちが礼を言う側です。ありがとうございます」


「くんくん…なんだか美味しそうな匂いがしますよ〜」


ライキが作ってくれているバーベキューの匂いに気づくカナ。


「おっ、皆来たのか!この、バーベキューとやらををするらしいんだ。ん?…おっちゃん!これムーンウルフの肉じゃんか!これ貴重なのに焼いちゃって良いのか?」


「はい。皆さんが馬の暴走の対処法を見つけていただいた少しのお礼ってやつですよ」


「なら…お言葉に甘えて」




ジュ〜ジュ〜


「お〜良い匂いが強まって来てます〜」


「そろそろ、裏返す感じかな」


ジュワ〜


裏返す際、美味そうな匂いが周辺に広がった。


『おお〜!』


皆が声を揃えた。


「よし、そろそろかな。さっ、先に食べちゃってくれ」


「いただきま〜す!」


ガツガツガツ


「これは…美味しすぎます!!」


勢いよく食べるカナ。相当腹が減っていたようだ。


「ウルフの肉、初めて食べましたけどここまで美味しいとは…」


感想を言った後、また肉をリスのように口いっぱいに頬張った。


「そんなに頬張って、まだまだあるからゆっくり食べれば良いのに」


「うん。やっぱり皆で食べるご飯は最高ね!」


ソニアも体調が良くなったようだ。


「さーてオイラも…美味い、上手く焼けて良かったぜ〜」


「そうそう、寝る際は向こうのテントで寝てくれ。建てといたから」


「結構な数だけど、まさかユウ一人で!?」


「ああ。こういうのは昔から得意なんだ」


「得意ってレベルじゃないわよ。一つ建てるのにも時間かかるのに…そう言うことに関してはプロね。プロ」


「あ、ありがとう」


「ねーねー、温泉街行ったら何する?」


「うーん、私は…」


「あ〜ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ、あーそーれー!」


「今日は飲みまくるぞ〜!」


運転手さんの仲間達がお酒で酔って踊っている。


「お酒って…明日そのまま運転しちゃって大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。男の人はあんな感じの人が多いですから。因みに今私が飲んでるのもお酒なんですけどね」


「え、リナさんって未成年なんじゃ…」


「私、とっくの前に成人ですよ。もしかして成人年齢がユウさんの元の世界と違う感じですか?」


「俺の世界は、二十歳から飲めるようになるんだよな〜」


「この世界で成人は十六歳からですよ。なので、カナさん以外なら全員飲めますね」


「これはどっちの世界の法律を守るべきなんだ?」


「ここに来たら帰れないんだし、ここの法律に従って生きていけばいいと思うぞ。初めは慣れないかもだけどな」


「な、ならカーマの言う通りにするよ」


「お〜い、リナさんもこっちで一緒に飲みましょうよ〜!」


「あ、今そっちに行きますね〜」




一時間後〜


「ごちそうさまでした!」


「ふ〜結構食ったぜ〜じゃあ、オイラはもう眠いから寝るわ。お先〜」


「お疲れ様。また明日よろしくな」


「…まだ眠くないのよね。今からどうしようかな?」


「カーマはどっか行っちゃったし、リナさんは向こうで酔い潰れてるし。うーん、三人でできることか…」


「あーそーれー!」


他の人達はさっきまで持っていなかった太鼓などの楽器を使って楽しんでいた。


(どこから持ってきたんだ…)


「この前本で読んだのですが日本での暇潰しするための遊びがあるらしいですよ。しりとりでしたかね….」


カナが提案した。


「するなら、ルールを教えるぞ。しりとりっていうのは……」


「何それ!?また面白そうなゲームね。さ、まずはジャンケンで順番を決めるわよ」


『ジャンケン…ポン!』


(やった、勝てた)


「なら俺から。 り からつく物……りんご」


「うーん、ゴースト!」


「と、と……友達」




5分後〜


「ムーン!あっ…」


カナが語尾に、んのつくものを言ってしまった。


「ま、負けてしまいました」


悔しそうだが、カナは顔に表したくないようだ。


「上を見てください。今日は晴天、いや快晴でしたから星空がキレイです」


星空を見ながら俺に言うカナ。


「めちゃくちゃ綺麗だ。この景色を見ながら温泉か〜最高だろうな」


「ふわ〜あ。アタシ、もう疲れちゃった。じゃあ、お先〜」


シュン


「あ、待ってくださ〜い!私も行きます〜!」


カナは暗闇が苦手なようだ。光魔法を使えばいいと思うけど、疲れるからか。


「ふわ〜あ。俺もそろそろ寝るか〜」


『ハハハハハ!』


「キャンプファイヤーだ〜!」


「皆、踊るぞ〜!」


「エヘヘヘヘ、おさけ〜さいこ〜!」


(リナさん、飲みすぎておかしくなってる…)

































































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る