人は右/車は左/鳥は上/モグラは下を/虹の彼方へ


 人は右/車は左/鳥は上/モグラは下を/虹の彼方へ



 人は右、車は左。連作のタイトルにもなっているが、これ自体は何の変哲もない、日本の交通ルールだ。

 ここに鳥は上、モグラは下と付け足すことで、風景は突如立体的になる。

 また、鳥とモグラに上下を割り当てることで、当たり前に思われていた人と車の方向も、割り当てられた――押し付けられた規範ではないかと、読者は疑い始める。それぞれの方向で自由に過ごしていたつもりが、人も車も鳥もモグラも、菱形に区切られた中で暮らしているに過ぎないことを、突きつけられる。

 その彼らが共に、虹の彼方を目指すのだ。そうすることで、「前後」の方向にだけは無限が生まれる。虹に麓はなく、虹の彼方には永遠に辿り着けない。

 窮屈な世の中をまず打ち破る第一首。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る