天涯

 夏の盛りに模様もようしていた、賑やかな朝顔たちの種子をせっせと収穫してはまた 時節に思いを寄せ、いっときの大輪を咲かせた背丈の永い蔭の向日葵の笑みは あの憐れな姿と見たか。

 それは いつか どうか、今では、枯れ果て 横たわり、もうすぐにふっくらと多量の子をたわむれに孕んでいるらしいぞ。

 蟋蟀しっしゅつたちは囁き芒たちがさざめくとは云うけれど、些か煩すぎやしないかね。

 十六夜いざよいも碌に過ぎ去った或る梳き時スキドキの晩に、細月のまなこだけがそれを見つめてと、懇願し 更々と知っていても、なんらおかしくはない。

 河原のかたわらに永遠点る行列は、赤々と燃ゆる 先の先の魂まで、闇に浮かぶ地獄花の葬列と続いてゆくことは 確かに。

 もの悲しくの啼く、鎮魂歌にも満たない、根腐れた蠱毒に酔いた川面に伝染ることはない、泣きっ面を覗き込んでは 懐かしむばかりの逝き先は、ただふらふらと奥の、底まで、等々に皆一様に惹かれてしまうのだから。

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