季節の境。


春 眠 不 覚 暁

処 処 聞 啼 鳥

夜 来 風 雨 声

花 落 知 多 少


暗転好天、雅にじたばたと駄々っ子な、これは、なさけ 未練でございます。

もう死んでもいいと思いましたので。

小さく折りたたんで必死に籠めたものをらくに吞み込みました。

しかしいつまでたってもメが這えてこないのです。

寂れたお堂から持ち帰った赤子は幽かに育っているようでございました。

心内をとくとくまなくまさぐり、血潮をも凍らせてしまったことは事実であるというに。

未だあたたかい、空きの昼下りに、とうとう、私は眠りとさとりますゆえ。

時が来たら興してくださいませ。私の底に野花が咲きますようにとその程度で善いのです。

地に飢えた種が芽吹くことはなかった。しかし大地よ、私の血肉を抱いてくださいませ。



ただ美しく散るために彩られた者たちを私は祈念する。

街路樹が騒めき出す、彩りの幸。


言の葉を透かし いっそう負けじと 天に戦いでいた賑や風が、勝手にも心地善い、永久(とわ)

独り言ちる有様情けなかろうが誰も気に留めやしない。私だけのイロハ逆巻きに、

季節は狂い座威クルイザいて幾重も実りを待ち望む。


散り散りの残影で紡がれたヒトガタのヤドリギの漂泊を、

流れつくままに往けたとしてどんなにか掬われたことでしょうか。


雛達は散り散りに毟られ阻まれ、新たな形代を抱え震えるばかり。


うつろうつしよ

私の瞬きひとつで


消されてしまう 夢で在っても うたかたであえても、

今叩きつける岩礁の滂沱の嵐と意志の拳を握り締めて、耐えうることは、

幾ばくも無い命に誓っても、天に祈りは届かないでしょう。


中程まで現れた心得など何の役にも立たずに、崩れちまった

元から無かったかのように ならないものが口惜しく苦さだけを。

なにかにつけたく 荒れも泣く 天高く快晴でも おそろしいのは

自由に囚われた ものの オチもない 場違いな 秋色の化粧 場違いな化けの皮。

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