昇天

 四十九日後の傷んだ薔薇で仕切られた安らかな本能の実りから墓場までを数える。独房にくるまれた赤い爪先、藁にもすがる白鷺の悼みが今持って渇いて死ぬ

 草木色の水の中の眠りから醒めた終の鉛管に重吹く桜よ

 ほら、星屑のハニービーンズのしとどまりは壊れた僕が僕であるために確かに、咲いている花は簡単に抱かれてしまう訳、後悔の香箱の中身だけを白い木蓮の渇きが取り出された、重みのないいつものシリカゲルは鈍く

 置いてけぼりで駄々を捏ねる赤い糸の魂を眠らせ、私の手の内側に潰されたような、愚かしく音のない世界でつぎはぎだらけの口を縫う。おやすみ、と僕達の蹴鞠は繰り返し汚泥を撥ね、五月雨に喪われた鬣をも凍らせ、うつし鏡として、神雷に撃たれ、狐憑きの夜光虫を抱いて

 これがほの甘い私なのだろうか。

 金平糖と尿瓶に花散らかして、朽ちらばして結ばれた幻想に蹴躓いた偶然が、奴隷に酔って集った背徳だとしても、急ぎ正しき方に旭とも名を呼んでくださいます

 ついてゆくことしか馬車馬の軸も導きも弾かれぬ、枯れ葉が舞う道ですら惹かれ、高揚する死した躰が軽く浮く、魂とも萌えてしまう心など曖昧であってこそ開かれるものです、故。

 枝垂れ童子の羊角が膨らんでは折れ、碧風と紡涸れた天を塞ぐ庇の襞の紡ぎ、秘除けにも少しばかりその腕でアナタに孵す

 それがどこか遠くまで翔け、美しい文をぶちまけて暮れると絹糸で仕切られた泣きそうな面をそおと引き剥がして見せれば、らくに擡げた首から上が、知らぬ糸目で赤き血を惹いた口先だけの八重歯が響き、僕の白き首筋にちくりと妖艶に刺し、百舌鳥色の痕をふたりに謳わせたと、奇跡のまち針で停る夢の夜はひとつき。

 自由に殺された女王蜂の背にともに出会いと怨念と明日を迎え、総てを失いながら地に迎い無惨にも羽ばたいた

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