第1話
なんの変哲もない日だった……と、珠希は記憶している。いつも通り学校へ行き、いつも通りそこそこ仲の良い友達と挨拶をして、いつも通りに授業を受けた。
問題はその後の昼休み。固定化されているメンバー数人と珠希が昼飯を食べている時、突如として、眩しい光に襲われ、床に魔法陣が浮かび上がったのだ。
咄嗟のことに誰も反応することは出来ず、無抵抗なまま流されたままだ……-しかし、誰かが「うひょー!異世界転移キター!」と喜んでいた人がいたが……。
眩しい光に視界が全て埋め尽くされると、意識を失った。次に珠希が目を覚ました時は、誰かにキスをされていた時だった。
(……何故!?)
「はむっ……んちゅ……あ、起きましたか?んっ……」
起きたのを確認しても、目の前の女性はそのまま珠希の唇を貪り出す、ピンク色の髪が特徴的な女の人。
珠希は、角のことは一旦無視した。
(………どういうつもりかは知らんが、キスで俺に挑むとはな)
「んちゅ……んんっ!?んー!!」
「くちゅ……れろっ……」
珠希は手が自由に動けることが分かったので、まず逃げられないように相手の腰に腕を回し、頭を押さえつけた。
そして、攻撃開始。なすがままにされていた謎の美人とのキスに反撃の舌を絡ませた。
(………ま、里見さんたちよりかは強いけど……俺の相手ではないな)
「ん~~っ!!んちゅ、んっ、んー!!」
じたばたと暴れる女性を無理やり押さえつける珠希。最初こそはものすごく抵抗をされていたが、30秒も経つと、暴れる力が弱くなった。
なので、珠希は唇を解放した。力が入らないのか、女性は珠希にそのまま倒れ込んできた。呼吸も浅い。
(………ま、こんなもんか)
よいしょっと女性を抱えたまま上体を起こす。
彼は幼い頃より、親が働いている………というか、親がオーナーをやっている女性専用店……所謂レズビアン向けに作られた店でちょっと怪しいお店を経営している。
ーーーー違法ではないのが唯一の救いだが。
そこで珠希は親の友達又はお客に、女性が喜ぶキスのやり方などを幼い頃より仕込まれている。なんなら女性専用店のくせにたまに珠希がご指名されることもある。キスだけであるが。
腕の中で荒い息をはぁはぁと若干発情気味に呼吸をしている女性を見つめる。そして次に、周りを見ると、なにやらでかいベッドに横になっており、全体的になにやら暗い雰囲気の部屋にいた。
「……どこ?」
やっと現実を認識した珠希は現状を整理する。
(……確か、いつも通り、昼休みに母さんが作ってくれたご飯を食べてて……床がなんか光ったと思ったら意識失ってて………)
そういえばなんか異世界転移きたー!とか言ってる奴いたなぁ……と思いながら、とりあえず、もう一度その女性の口を塞いだ。
「んむっ!?」
久々のキスのしがいのある相手だったので、もう一度したかったという気持ち7割だが、残りはさっさとこの状況を説明して欲しいと思って、正気に戻そうとする意図が3割だ。
「んっ……あ、あなたは………」
とろーんとした表情で珠希を見つめる女性。本能的にまた快楽を求め、珠希の頬に手を当てて、またキスをしようと女性が顔を近づけるがーーーーー
「……そろそろ状況説明してくれるか?」
「……………あ」
ピトッ、と唇に優しく指を置いた珠希。二回ほど女性がぱちぱちと瞬きをすると、本来の目的を思い出すかのように慌てた。
「そ、そうでした……!ちょ、ちょっと待ってください!」
と、ボンッ!と急に目の前からいなくなり、珠希の胸に先程まであった人肌の温もりが一気に消え去った。
「………は?」
そして、珠希はまたもや状況について行けなくなった。
「………一体なんなんだ……?」
待ってろと言われたが、別に部屋から出なければ問題なかろうとの判断から、ベットを降りる珠希。
(……しかしなんだ?この悪趣味で真っ暗な部屋は……)
壁紙、床まで暗め。色は赤色にちょっと黒が混じった何となく安心するような色合いで、天井にはシャンデリアらしきものが着いていた。
部屋を物色していると、先程の女性がまた目の前に急に現れた。先ほどは密着しており、全体象は分からなかったが、腰ほどまである長い桃色の髪に、頭に生えている2本の角。そして、腰あたりから生えている一対のコウモリのような羽。
今まで見た中で断トツに美人で断トツでスタイルがいい。まるで男の理想のような体型をしていた。
「すいません!紹介が遅れました!私、『サキュバス族』のリリアと申します!」
「………サキュバス?」
「は、はい!」
なにやら少し聞いたことのあるような名前が出てきた珠希は少し考える。しかし、考える暇もないままに、リリアと名乗る少女から、またまた衝撃なことを聞かされる。
「私、今日から珠希様の専属メイドとなります!よろしくお願いします!」
「………………は?」
珠希は頭を抱えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます