第7話
綺麗に整えられた執務室だろうとは思っていなかった。
やはり目の前に広がった光景は、物が散乱しており中央の奥に置かれたデスクは書類の山になっていた。
下手に触ると雪崩を起こしそうだ。
しかも、足の踏み場もあまりない。ここを通っているんだなと思うような道しか見当たらない。
「朝霧様ようやくお戻りになられたのですね!」
左右に扉があり左側の扉から男性が顔を出してきた。
叔父さんと同じ服装で、疲れきってます感漂う男性だ。
「書類をほったらかしてどこに行ってたんですか!
期日が今日のお昼までですよ、間に合うんですか?この書類の束をみて、よくほっつき歩けましたね?」
その男性が叔父さんに詰め寄ってくる。
「ごめんねー、甥っ子の一大事に駆けつけてたんだよー。」
叔父さん謝る気がないな、笑顔を振りまいてるよ。
「甥っ子てお隣にいる方ですか?すみません、お見苦しい所を。朝霧様がしょっちゅうデスクワークをサボるので私も心の余裕がないのですよ。」
ぺこぺこと頭を下げてきた。
「いえ、気にしないですください。寧ろこちらこそ叔父がすみません。」
「朝霧様と違って、礼儀正しい子ですね。ほんと、朝霧様に似なくてよかったです。」
「ねぇ、本人目の前にいるんだけど。見えてる〜?」
叔父さんが、男性に向けて手を振るが無視だ。
「ご挨拶が遅れました。私、朝霧様の側近侑李(ゆうり)と申します。以後お見知り置きを。」
「俺は、柊木蒼です。いつも叔父がお世話になってます。叔父がさっき俺を助けてくれて、決して仕事を投げ出したわけじゃないと思うんです。だから、今回は怒らないで下さい。」
「朝霧様に、蒼くんの爪の垢を煎じて飲ましたいくらいにいい子ですね。立ち話も何ですので、座って下さい。かなり散らかっていますが座る場所はある筈ですので。」
いつの間にか部屋の隅っこでしょげてる叔父さんをほっとき、俺は侑李さんに勧められたは中央に置かれたテーブルの長椅子に座る。
下手に動くと、左隣の書類の山が崩れそうだ。
「茶菓子を持って参りますね。」
「茶菓子なら持ってきた。」
背後にお盆を持った男性が立っていた。
いつの間に部屋に入ってきたのか。
「助かります。」
侑李さんが、男性からお盆を受け取り僕の前に茶菓子とお茶を置く。
「椿餅と緑茶です。お茶は暑いので気をつけて下さい。」
目の前に艶やかな葉っぱに挟まれた白いお餅が置かれる。
「椿餅?」
「聞き慣れないですよね。椿餅は平安時代に軽食がわりとして食べられていた餅菓子ですよ。」
「椿餅はね、源氏物語にも登場していて一説には日本最古の餅菓子と言われてるんだよ。」
叔父さんがいつの間にか長テーブルを挟んだ向かい側に座っていて呑気にお茶を啜っている。
「清霞(きよか)お茶を持ってきてくれてありがとう。」
叔父さんが背後に立っている男性に礼を言う。
「清霞はね、隠密部のトップなんだ。情報通でね、陰陽寮の中で知らない事は無いんじゃないかな?私の知らない事まで知ってそうだよ。」
そう言って笑いながらお餅を口に含む。
「朝霧様、話があって蒼君をここまで連れてきたんじゃないんですか?」
「そうだね。話そうか、殺生石の事。そして、蒼のこれからの事を。」
叔父さんが、背後に侑李さんと清霞さんを従えて話出す。
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