第5話

「ちょっと待ったーー!」


僕が札に手をかけようとした瞬間部屋に大きな声が鳴り響いた。

後ろを振り返ると扉口に僕の叔父、柊木愁(ひいらぎしゅう)が立っていた。

しかも服装が映画とかでみる陰陽師役が着るような格好だ。


「叔父さん⁈」

「誰ですか⁈」


僕と河童は揃って声を上げる。


「蒼、その石に触れてはいけないよ。早く離れなさい。」


叔父が僕の右手首を掴み、石から離れさせようとする。


「触れたらダメってどう言うことだよ。この石は人間に影響を及ぼしちゃうんだろう。それなら早く壊した方がいいじゃないか。」


「どうしてこんな場所にいるのかといえばそう言われて唆されたのか。……そいつに。」

叔父は冷たい瞳で河童を見る。

こんな顔を見るのは初めてだ。

いつも温厚で、抜けている叔父とは真逆で僕は怖いと感じた。


「いやはや、陰陽師がいらっしゃるとは……。

唆すとはどう言う事でしょうか?私は妖と人間の事を思っての行動でございますよ。」


「妖がこの殺生石の事を知らないわけがないだろう?考えずとも君がこの子を使って目覚めさせようとしていると至るだろう。

しかもお前河童じゃないな。誰の手先だ、捕縛部隊に捕らえられるか、私に祓われるかどちらか選べ。」

河童は叔父に睨まれじりじり後ろに下がっていく。


「……バレてはしょうがない。河童のフリをして嫌いな胡瓜を食うのもキツかったわ。だが霊力を蓄えた奴が2人にも出会えるとわな……。

お前に祓われる前に、お前とそこの小僧を喰って殺生石を壊してやる。」

河童の身体が震えだし、顔面にひびが入る。


「何だよ!河童じゃないのかよ!」

顔面にひびが入り、皮膚が破れて出てきたのは河童だと思っていた妖は小鬼だった。


「禍々しい妖気がすると思えば小鬼か。

 地獄の使いが、現世に何用だ。」


叔父が僕の前に立つ。


「あの方を……玉藻前様を目覚めさせるためにだよ。妖達が影で暮らすのではなく表を堂々と歩ける様に、この世を正してもらうんだよ!」

河童はそう言うと僕らに向かって来た。


「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女(せいりゅう・びゃっこ・すざく・げんぶ・こうちん・ていたい・ぶんおう・さんたい・ぎょくにょ)」

叔父は何かを唱え始める。

時代映画でよくみる様なシーンだ。まさか叔父にそんな事が出来るとは……

今目の前で起こってる事は夢なのかと思ってしまう。

小鬼が段々と苦しみだす。

しかし、こちらに来ようとする歩みは止めない。


「朝霧様ご無事ですか!」

どうなるのかと思っていた中、叔父と同じ格好をした人達が入って来る。


「ようやっと来たか、あの小鬼を捕らえろ。」

捕縛部隊だろう物達が何かを構え小鬼を囲む。

その物達から持っていた物から光が出て小鬼に当たる。

小鬼は光のせいなのか動けなくなる。


「捕縛術の類か……。私は捕らえられても何も喋らないぞ。捕まるくらいなら自決してやる!!」


小鬼は腰に括り付けていた短刀を腹に刺す。


「私だけじゃないぞ。他にもいるんだからな。お前達人間のせいで私達妖らがどんな目にあって来たか。必ず復讐してやる……!」

そう言って砂となって小鬼は消えていった。

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