私の好きではない人
私には、たった1つ。
たった1つ好きになれない人がいる。
それは、自分を信じられない人だ。
人間には一人一人に、すごいパワーがある。
私はそのことを、この長い長い人生で知ることができた。知るまでに大変な時間がかかってしまったが、悪くはない報酬だと私は考えている。
昔、無駄な人なんて誰一人いないんだよと言っていた恩師がいた。
当時の私はそれが信じられず、自分だけが正義だと勘違いして、自分が嫌う人を無差別に自分の世界から追い出してきた。
年齢を考えればそれは仕方がないことだが、馬鹿なことをしたなと今になって思う。まあ、それでも悪い経験などとは思っていないが。
そして年を重ねていくうちに、人生観はコロコロと簡単に、そして次々に変化していった。昔嫌いだった人に、次の瞬間には自分がそれになっていた。
でも、それは決して恥ずかしいことではないと教わった。昔の決意が簡単に覆ってしまうなど、ありふれたことなのだと。
重要なのは、そんな事ではないのだと。
重要なのは、たった1つ。今の自分が、自分を好きになれるかどうかだ。
いくら昔の自分が、指差して自分を笑っていようと関係ない。今の自分が、自分自身に胸を張れるかが重要なのだ。
そして、そんな自分になる事こそが、何より大切なことなのだ。
本来、人間にはそれができるほどのパワーと、知性がある。もし自分には足りないと思っても、手を伸ばしてくれる別の人間がいる。
人というは裏切り合う種族だ。でも同時に、助け合える種族でもある。
自分が持っている力を発揮して、時には他人の手も借りて。ここぞという場面では、あえて自分の力だけで乗り切ってみて。
そうやって人間は、自分自身を認められるようになる。
だから、いつまで経っても自分の殻に閉じこもり、自分の力を疑い続ける人を好きにはなれない。
殻を割るのは、いつだって自分だ。周りの人は応援はしてくれるが、心の殻に触れることはできない。
自分の力を信じ、『勇気』を手に入れてこそ、その殻を破るきっかけが手に入るのだ。
誰にだって、嫌いな人がいる。必ずいる。
だが、その『嫌いな人』に自分を含んではならない。
含めば心の殻は厚くなり、闇は深くなっていく。最終的には、殻の中で腐り死んでしまう。
自分を信じてあげること。
自分自身を目一杯応援してあげること。
それが、この長い人生で学んだたった1つの『真実』だった。
私の家に孫が遊びにきたとき、私は彼らの笑顔に胸を打たれる。自分を信じて疑わない彼らの眼に、私は心を揺すぶられる。
いつか彼らの心にも殻ができるだろう。閉じこもりたくもなるし、自分を信じられなくなる日がいつかきっと、必ずくる。
彼らがその殻を破れるように、私はたった一言だけ彼らに伝えている。たった一言だけ、繰り返し。
私にできるのは、応援だけなのだから。
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