オリンピック。7連戦の始まり。
青学は甲子園で1回戦、2回戦と順調に勝ちあがる。俺も負けてらんないぜ!とオリンピックが開かれる北京に向かう。8/12に北京入り。東京との時差は1時間程度で問題はない。オリンピック自体は8/8に開会式がとり行われ、すでに開かれていると言った方が正しいか。ホテルは選手村でないのが残念だ。
野球競技に出場するのは8カ国。予選は総当たりによる順位戦。上位4チームが決勝ラウンドに進む。初戦の相手は強豪キューバ。
「健ちゃん!」
チェックインするなり電話がかかってくる。
「中国語できたよね?飲みに行こう。⋯⋯俺たちの開会式だ。」
なに上手いこと言った」つもりになってんの?
「明日試合ですよ?」
「知ってる。どうせナイトゲームだし。門限まで帰ってくれば平気だから。」
「だから俺が未成年と知ってますよね?」
「うん、知ってる。俺たちの前夜祭だから。」
知ってるじゃねーよ。もう、日本語が通じる店をフロントで聞けよ。
中国は野球人気はさほど無いため、割と面が知られていない分、羽根が伸ばせそう。
「だからオリンピック期間中で日本人も多いですから。」
「だから健ちゃんに頼んでんじゃん。日本人にはあまり会いたくないし。」
仕方がないのでホテルの俺ら担当の社員さんにチップを握らせて、彼の「おすすめ」のお店を聞くことに。
「デーゲームの前日とかは絶対に付き合いませんからね。ハシゴも無しですよ。」
ああ、引退したらガイドとかやろうかな。
「もう働かなくても良いくらいもらってんじゃん。」
まだもらってねーし。タクシー2台で夜のお店に。
日本に留学したいので勉強してまーすって感じの綺麗なお姉ちゃんたちに囲まれてデレデレ。さすがに高い店だけあって綺麗どころが揃ってました。
「お前、嫌な時は嫌って言えよ。しかしお前みたいな性格のやつがよくプロになれたな。」
球場での試合前の事前練習。先発のため「前夜祭」に不参加だったダーヴィッシュさんに叱られた。
「確かに、流されやすいんですよね。新しい技術とか、トレーニングとかすぐ試したくなるんですよね。」
「それを『流される』とは言わねぇだろ。」
キューバは長い間、アマチュア球界の王者だった。そりゃカリブ海諸国の身体能力に恵まれた選手たちが幼い頃から英才教育を受けて育成される。近隣の国のジャマイカの陸上競技の選手みたいな肉体だ。日本人とは積んでるエンジンの馬力が違う。
しかもアメリカや日本でなら億円単位の給料をもらいながらプロ生活できるレベルの選手が一般人の2倍程度のサラリーでプレーしているのだ。
そりゃ強いわ。ただ、亡命者が続出し、徐々にナショナルチームも弱体化している。共産主義の気高い理想も資本主義の金の前には無力なのだ。そりゃ才能と努力が正当に評価されるのが自由主義の方が有能な人間にとっては魅力だもの。
さて、日本では才能がある選手は投手を選択する傾向があるが、キューバでは逆だ。なので打者の適応力には警戒すべきだ。なので俺が前回使われたように
でも考えて欲しい。相手は「国威発揚」を目的に来た共産国家だ。前回負けた相手にオメオメと負けに来るだろうか?むしろ勝つための算段を講じるだろう。
しかも前回の対戦で国家の首長が俺を褒めちぎった。これは俺に対して二度と負けることを許さないという意思の現れではなかろうか。
だからこそ、俺は最初の打席が肝心だと思う。
二死無走者。俺は渾身の魔法をかけ、超ベテラン投手の球を待つ。狙いさえ分かれば荒れるが力のある球を持つ投手よりはくみしやすい。脅しのインコースの後の外角の直球を振り抜いた。オリンピック初打席は本塁打。ダルさんならこれを元手に抑えてくれるはずだ。
予想通り俺は2打席目からは全く相手にされず、全て敬遠もしくは敬遠気味の四球。しかし、残念ながらチームも4対3の僅差で敗れてしまう。ただこれは実力差ではなく調子の差だ。
メンバーの実力的には優勝を無理なく取れるはず。だが、アルゴリズムが果てしなく悪過ぎる。うん、アルゴリズムなんて言葉、昭和やな。
その証拠にマッサージ希望者がいっぱいで夜中まで待たされた人もいたようだ。
さてどうしたものか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます