心配症のセンパイとのびのびとしたコーハイと。
(本年もよろしくお願いいたします)
学校は結構
もちろん、データ収集に訪れる対戦相手だったり、記者やスカウトと言ったお仕事で来られる方もいるが、ふつうにファンという方々も多い。
まあ、観られる方がやりがいが出るのは間違っていないが俺が心配なのは「自意識」の問題だ。
個人的には都市対抗に出た当たりからの「こいつはきっといつかは
もちろん、それを悪いものと断定しているわけではない。勘違いをしてはいけないということだ。
俺は良識と自戒を込めて言っている。ただ、先輩後輩を含めいつも俺の考え方は不評なのだ。俺の話に辟易したのか
「健さんの『舞い上がってんじゃねえ』論はわかるんですよ。ただ、健さんレベルの人間の『謙遜さ』はある意味嫌味でしかないんですよ。はっきり言いましょうか?健さんはこのまま行けば来年のドラフトで全12球団から1位重複指名されるかもとか言うくらいの、正直言って高校生では洒落にならないレベルなんです。
そんな選手が同じチームにいてイキれる同輩も後輩もいると思いますか?そうできる方が不思議なんですよ。もういい加減健さんは自分がそう言う存在だって自覚してもらっても良いですかね?先輩の年代は将来的に『沢村世代』と呼ばれることがすでに決まっているんですよ。
先輩にとっての山鹿さんや伊波さんは、俺たちには健さんですんで。お願いですからどっしりと構えてください。俺たちは目の前の
⋯⋯はい、すみません。こうして叱ってくれる人間がいる、ということ自体が俺がまともな人生を送ってきた証だとも言える。
ただ、あの魔法無しの決勝戦は俺に大きな変化をもたらしてくれた。自動回復や体表硬化と言った基本的な魔法以外は高校生相手には不要だということだ。もちろん、天才的な選手は別にすればだが。
魔法の使い方を一段レベルアップさせる必要がある。それに役立ちそうなのがプロレベルの選手を間近に見る事であり、一流どころが集まるオリンピック予選となるアジア選手権はいい機会になるはずなのだ。
秋季県大会、3回戦。先発は胆沢。県大会とは思えない観客の入り。Aシードなのでずっとメイン会場の県営大宮球場でやれるというメリットはある。
胆沢は甲子園後初の公式戦ということもあって序盤は緊張感もあったがそれが抜けてくると速球とカーブを駆使した圧巻の投球。相手に付け入る隙を与えず完封勝利。打線も十分機能して7回コールドだった。
先輩たちが抜けて、ぽっかりと大きな穴が空いたのは事実だが、みんなもいつのまにか成長していた。これって、もしかして俺がいなくなっても十分やっていけるんじゃなかろうか。
実は次の甲子園は春が80回、夏が90回の記念大会である。つまり、出場校が増枠される大会なのだ。春は32から36校に出場校が増え、埼玉県も夏は東西か南北に分かれて予選が行われ2校が出場権を得る。だから俺たちはラッキーな世代とも言える。ようはもし俺が夏いなくてもなんとかなるんじゃないだろうか、ということだ。
準々決勝は安武が登場。5回コールドながらノーヒットノーラン。リトル、リトルシニアで全国制覇を経験した左腕はすでに甲子園デビューも果たしており、持ち前のイケメンさ具合は、やはりイケメンで大人気だった中里さんに代わる女子人気を得ることは間違いない。しばらく妹さんには会ってないけどむちゃくちゃ美少女になっているらしい。
準決勝も亜美の学校である彩栄学院と当たったが凪沢が完封。あっけなく関東大会への切符を手にする。
「健、少しいいか?」
東郷監督に呼び止められる。
「はい。」
監督はチームの好調な滑り出しと俺たち2年生がチームをしっかりと引っ張っていることを褒めてくれた。
「俺は
なんだろう?なんの前置きだろう?監督が手放しで人を褒める時は大抵その後に言いにくい言葉が待っているもんだが。
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