俺、ついに習得する。(今回は厨ニ回)

 そうだ。野球の試合結果言ってなかったな。南フロリダチャンピオンになれました。全国大会は無いからここで終わり。


 もっとも俺も学年末が終わったら日本に再び帰ることになるのだ。


 今回の渡米の主要な目的はこれまで試行錯誤してきた魔法をもう一度体系的に組み直すこと。魔法を使い続けることによって獲得したり、習得したり、術式を組み直した魔法を効果や消費魔法量によって使いやすくすること。


 現在、甲子園覇者としてグラウンドでの一挙手一投足に注目を集めてしまう状態ではやりにくいことなのだ。


 「選球眼」


 デバフ「幻影」のうち撮影術式を分離。バフ「加速」で眼球、視床下部の情報処理速度を加速。さらに「幻影」の映像術式でボールの予想軌道を網膜に表示。

 アマチュアは初対決が多いため最初の打席では情報収集に徹するかある程度球数を投げさせる必要が生じる。


 「強打者スラッガー


 バフ・体力倍加を体幹部分にだけかけ、さらに「カウンター」魔法でボールを理想的なスイングで捉える。さらに「一撃魔法クリティカル」を重ねがけすればバットの真っ芯スイートスポットで捉える確率が高くなる。

 個別にかけることで「攻撃力アップ魔法」が不要に。


 「パーフェクト・コントロール」


 バフ「倍加魔法」でステップ動作の使用する下半身の筋肉と、上半身の強い回転を司る体幹の筋肉をフル稼働させる。そして「命中率アップ」によって理想的なステップ、腕の振り、リリースポイントを自動調節し狙った座標にボールを投球することができる。


 「スムース・ラン」


 「体力倍加」による体幹強化と「敏捷性アップ」による走行姿勢の自動調節によって自己能力では最速の塁間走行を実現。


「自動回復」


 そして、疲労による怪我をなくすための魔法。



 青学でもここでも野球の動作のメカニズムを一から叩き込まれるせいか、理論的に魔法と野球の融合に努めることが可能なのだ。


 ただ、自分でどうにかしなければならないことが一つだけある。それは自身の身体の柔軟性を保つこと、とりわけ関節の可動域の広さの確保が重要なのだ。それに関する支援魔法がないためここだけは自分でどうにかしていかなければならない。そうでないと魔法で強化された自分の動きに自分の身体が耐えられなくなってしまうのだ。


 帰国前、由香さんが俺を訪ねてフロリダまで来た。正確にはメジャーの試合の取材のついでだが。

「結局、エリアコードゲームは行けないのね。」


「甲子園と被りますしね。」

「あら、あなた一人いなくても十分勝てそうだけど。」

由香さんは春の県大会と関東大会で青学が優勝を果たしたことを教えてくれた。


 しかし、なんでこだわるかな。どうもヤンキ一スの女性スカウト、ケリーさんの伝言を持って来たらしい。


「ケリーとしては他の球団にあなたを見せたくないからこだわってはいないわ。ただ、あなたを上位指名するためには監督や役員を説得するための材料が要るそうよ。」


「いやいや、俺こそ高い評価がもらえれば、ニューヨークにこだわりはないですよ。」


「まぁそうよね。」

由香さんは苦笑を浮かべる。

「それで沢村君には出て欲しいんですって、オリンピックに。」


「なるほど。⋯⋯っておい!」

 来年、中国の北京でオリンピックが行われることは知っているが、そこに出場する予定なのは日本のプロ選手、それもトッププロなのだ。


「まあほんとに出るかどうかは別にしてナショナルチームの一次メンバーに選ばれれば説得力が増すのよ。あなたもインコチ杯でナショナルチームを経験してるから。」


 本戦に出られる正式を選ぶまえの「一次選考」に残るのもままならんがな。アメリカのメジャーリーグは8階層にも及ぶ下部組織を持っているからドラフトで物凄い数の選手が指名される。だから上位にかからなければ契約金もお安くなってしまう。だから指名を受けても評価が低ければ契約交渉を蹴る選手も多い。


 自業自得ではあるが、借金のためには日本のプロ野球かメジャーリーグの上位指名である必要があるのだ。


「日本の球界では来年のドラフトの目玉は確定ね。だからメジャーで3位指名以下なら日本を選択する方がアリね。だからオリンピックの一次メンバーが取れたらメジャーに志望届けを出すのを考えてみれば?これは私の意見。私的にはあなたがメジャーに指名された瞬間にあなたのそばにいて、特ダネスクープを発信する、それが野望よ。」


それにはまず、甲子園だ。そこで結果を残そう。


 

 

 






 




 

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