先輩たちと俺。
「同じ高校生だから」という表現がある。どんなに素質があっても「子どもらしい」隙がメンタル面にあるはずだ、と言う時に使われるのかもしれない。しかし、残念ながらあの先輩たちには当てはまらないのだ。
俺は凡人だ。ただ、幼少期から自分の能力の底上げを魔法を使って計画的にやってのけたと言う意味で俺は他人より優位な立場にいただけだ。もし俺が普通に地元の中学やシニアに入っていたらここまでは来れなかっただろう。でも俺はこの先輩たちに出会ってしまった。正直言って凡人は人生を何周しようが凡人のままだ。でも、本当にすげー、あるいはやべーやつに出会ったとき、その全てが変わる。
素質のある少年たちが優れた環境下と指導の下で、確固たる意思と揺るがぬ目標を据え、
相手投手は制球の良い打たせて取るタイプの投手。大会で完封経験は無いが防御率は1.29とチームの守備能力の巧さが光る。おまけに与四球も少ない。
だから相手チームの監督さんも「同じ高校生だから」という
「
住居さんが言うと伊波さんが食いつく。
「うはぁ、カッケーな。ウチもフレーズないの?なんかいいのないかな?」
伊波さん、どうせエロいことしか思いつかないからやめておきましょうね。
ただこちらも一回、いきなり能登間さんを置いて二死二塁で山鹿さんが先制のツーラン(大会9号)。スタンドまで飛ばされたら守りようがないよね。
ただ、守備が本当に上手くて、ヒットを打たれても長打にならないフォーメーションはさすがだった。
さらにファインプレーも多く、俺の最初の打席なんか三遊間を抜けると思ったのに抑えられてしまったほどだ。
ただ、硬いガードの上からぶち破っていくのがこちらのスタイル。
3回には2塁に伊波さんを置いて俺から三連続2塁打、さらに8、9回には住居さんと山鹿さんに本塁打(大会10号、11号)が出て10得点。
凪沢も3点は失ったが、崩れることなく完投で嬉しい甲子園初勝利を挙げた。
「一生の思い出です。」
という凪沢の頭を撫でながら中里さんがからかう。
「一勝で良いのか?」
「おかわりしても良いスか?」
もう4本塁打の山鹿さん。
「まあ打てる時に打ってるだけですから。」
と答える。今回は揃い踏みではなかったですね、と3番の俺に本塁打がなかったことについては
「健は『打てる』時じゃなくて『打つべき』時に打つタイプですから。」
としっかりハードルを上げるのをわすれない。
次は坂田さんだから魔法を使わないと打てないからな。
横浜学院の土門さんも2回戦を勝ち上がり、準決で当たる可能性も出てきた。
最後、先輩たちにあなたにとってライバルとは誰ですか?と聞かれていて皆が皆、同級生がそうだと答えていた。俺も先輩たちだと答えていた。
「うっそピョーン!」
記者会見が終わってから伊波さんが舌を出す。
「俺のライバルは健に決まってるわ。いつかお前を絶対に倒す!」
は?なに言ってんすか?味方でしょーが。
「俺も健だな。」
中里さんも?
「お前なんか卒業したらすぐに敵だよ。これ以上ないくらい厄介なやーつ。」
ええ?そう言う認識?
「俺も健だな。」
山鹿さんまで⋯⋯。
「別にお前を憎んでいるわけじゃないぞ。先輩後輩関係なくお前を認めているだけだ。甘えても依存しない。対抗してもにくまない。俺たちは健を対等だと思っている。
俺たちはいつまでも『仲間』じゃない。時が経てばいつか立場が変わって違うチームになって優勝を争うライバルになって行くだろう。でも俺たちは野球を極めていくという同じ目的を持った『同志』なんだ。それだけはずっと変わらない。だから今、この6人が同じチームにいる『奇跡』を楽しみたい、ただそれだけなんだ。」
学校を卒業したら現役を引退するまでは敵同士ですか。
「安心しろ。同じチームでやる可能性もあるだろ?それに引退しても人生はまだ半分残ってる。そこから先はまた友達だ。悪くないだろ?」
「そうだな。健にはメジャーでたっぷり稼いでもらってみんなで健持ちで旅行とかしようぜ。」
こいつらほんとは人生3周目だろ?本気で女神を問い詰めたくなった俺がいた。
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