リベンジする側される側
同点弾が出たあと、こちらの猛攻が始まる。いや、熊野さんが立ち直る前にたたいておかねばならないのだ。
伊波さんも「カーブが甘く入る呪い」が発動した九郎坂さんから二塁打。能登間さんの地面の結界を無意識に使ったセーフティーバントで1、3塁。
ここで俺が打席に。うーむ。後ろからものすごい「気」を感じるぞ。結界の張りなおしは完了したようだ。というのも本塁打で
結界魔法かぁ。異世界ではいちばん下のランクの
俺の対抗策は「命中率アップ魔法」しかない。これは「状況によらず」命中率がアップするからだ。そして
それを魔法で再現したのが
時限的な呪いでカーブを封じられた九郎坂さんは直球勝負。放たれたボールにバットが吸い付くように走る。スイートスポットでとらえたインパクトの瞬間、スイングの角度が微妙に変わる。なんだこの打ち方?
放たれた打球は新たに張られた結界をつき進む。右中間に鋭い弾道を進むボールはフェンス直前でホップしてスタンドに入った。逆転
あとでケントにこの打席の映像を見せてもらったがケントは
「もの凄いスピンがかかってるね。これが
と言っていた。
ただ腕の筋肉に物凄い負荷がかかったので習得しようとは思わなかったけど。結界やぶりに必要だったのだ。すぐに自動回復をかける。
8回、走者無しで熊野さんと勝負した中里さんだが
「いえ、最後までいってください。これは先輩たちのリベンジですから。まあ、もしもの時は骨は拾って差し上げますよ。」
と返すと
「おう、サンキュな。」
とだけ言ってマウンドへと駆けていく。
最後まで躍動感あふれる投球フォームを崩すこともなく、最終打者も因縁の
礼を交わした後、俺は熊野さんに呼び止められる。
「あれはいったいなんだったんだ?」
訊きたいことはわかる。
「
「いや、無理だろう。俺の神通力のレベルでは。」
わかるでしょ?あんたより魔法のレベルが低い俺にはもっと無理なの。
次の試合との兼ね合いで早々に着替えをすますと、先輩たちは神宮大会の特集を組む雑誌のインタビューを受けていた。
「リベンジと言っても、活躍してくれたのはあの時いなかった1年生二人でしたから。先輩
「沢村君、決勝進出おめでとう。ちょっと話を聞いていい?」
記者の小原さんも来ていて俺も取材を受けた。ユカさんの場合、個人的な取材で俺がビッグになった時のためにいろいろと話を聞かれるのだ。
「あなたがプロ野球で新人王を獲ったら本にして出せるわよ、きっと。」
意外に大真面目で言ってるんだけど需要ありますかね?
いよいよ翌日は決勝。相手は四国代表(高知県)の
「リベンジ」という点では山鹿さんたちとは因縁が深いチームだ。昨年度の甲子園夏、春連覇の時にはそれぞれ準決勝、決勝で対戦して勝っているのだ。互いにライバルと言って差し支えないだろう。今度は再びこちらが「リベンジ」の対象なのだ。
俺たちの世代にとってもそうだ。去年のシニアの選手権で対戦した
あの捕手かぁ。逆球しか投げられない荒れ球投手の球筋を完全に把握していた頭脳派捕手だ。
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