相談と告白と切られた火蓋。(準決勝)
こんな時になんだろう。夕飯前の時間に俺は亜美と待ち合わせて話を聞くことにした。
「ストーカー?」
聞けば学校に亜美宛に変な手紙を送りつけてくる人間がいるそうだ。
これはアマチュアとはいえ勝負事の世界である以上、悪い人間から選手を守る必要もある。あるいは男女関係問題など引き起こされても困るのだ。生徒の不安を煽るような「変な」手紙の類はその存在すら知らされないはずだ。
「私宛てと直接言われたわけじゃないけど、『そういうのも来ているので気をつけるように』って個人的に言われたんだよね。」
確かにそれだけ盛大に「臭わせれば」事実上気づけよという意味なのかもしれない。
「じゃあ夏休みは家に籠ってな。」
俺が笑いながらそう断定すると亜美は頬を膨らませて
「絶対にいやだ。」
と
対策は多くはないが、外出は単独行動を極力控えることと、俺がプレゼントしたヘアピンをつけるよう勧めた。前者については理解できたが当然ながら後者については理解できないようだった。
実は特別なビーズで編まれていて「お守り」もかねている、という説明にだけとどめた。俺は亜美の頭、そのつけられたヘアピンに手をかざし「
「怯え」は「
「ほんとだ。なんか気分が楽になってきた。」
心配なのでいくつか「
「
ありがとう、って言うか明日の準決も勝つ前提なのね。しかもお目当ては「東京」ですか?
「だってジュニア君来ないでしょ?」
やつもテニスの全国選手権近いからな。しかも個人戦では連覇かかっているし。二人で歩いているといつの間にか亜美の家の前に。亜美が別れ際に言う。
「めんどくさい相談にのってくれてありがとう。明日の試合も頑張ってね。私の東京行きがかかっているんで。」
照れ隠しなんだろう。ここは一発決めてやろう。
「亜美の話にめんどくさいなんてもんはないよ。俺にとっては世界で一番大事なことだし。」
「え?」
「
「う……うん。」
あー、言ってやったぜ。俺は亜美の反応を確認しないまま
準決勝の対戦相手は東京板橋。3回戦(準々決勝)で俺たちが以前対戦した奥州学院を降している。
「
俺は行きのバスも勢い余ってやらかした告白の余韻でボーっとしていた。後輩に揺り動かされて我に返る。いかんいかん。こんなことでは。あと2戦あるんだ。
去年同様、吹部やチア部もスタンドに応援に駆けつけてくれた。今日は先攻、つまりビジターになるため一塁側ベンチだ。ベンチに入る前に一礼する。ホーム側もさすがに地元東京のチームらしく大勢の応援客がつめかけていた。
先発は胆沢。まさに熱戦の
「
ああ『火豚』だと思ったのね。お前のせいでラーメン食いたくなってきたじゃねえか。
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