打線爆発!(3回戦)そして……。
これまで2試合は「投手戦」だった。他のチームからは選手権を制した先発二人と抑えの俺がそっくりそのまま残っているので「投手力」のチームと見做されている。
今日の3回戦は昼からのスタートだった。スタンドの客はまばらで大抵は選手の関係者が多い。甲子園の
今日はあの観客の中に亜美もいるんだなぁと思うと少しにやけてしまう。応援なんてどうでもいいと言うのは建前に過ぎなかったことに今更ながら気付く。後でばあちゃんにも電話しておこう。全国大会の時は遠征にあたって費用も結構もらっているんだよね。
「
いつもと違う空気を俺に感じたのか1年レギュラー二塁手の
「そだな。観光のついでだがな。」
彼は東京
「もしかして彼女ですか?羨ましいなぁ。」
「妹だ。ほぅら、相手チームがお前たち『世界チャンプ』を睨んでるよー。」
俺は話をそらす。
試合の相手は千葉
先発は胆沢。先回負けた時も先発していたので正直「リベンジ」する気マンマンのようだ。そして先発はエースではなく2番手ピッチャーだったのが彼の気に障ったようだ。
「なめやがって。みんな、今日はリベンジだ。」
円陣でも胆沢は鼻息が荒い。
いや最近は先発はエース一本という方が珍しいでしょうよ。ただ前回の大敗で少なくとも下に見られているのは間違いない。力むなよ、胆沢。
と、言うのもつかの間、また四球を連発して最初の2回で4点献上。ただし、反撃は2回裏のこちらから。
「問題ないです。今日は
打撃不振のため打順を大幅に組み替えたチーム。5番に入った
チームが2点返してようやく胆沢から力みが消え、本来の
1点差にした4回はこちらのビッグイニングになる。7番古城からはじまって5点をあげて一気に逆転。8対4とまさに点差をひっくり返した。5回には前日投げたばかりの相手チームのエースを引っ張りだす。そして6回2死、走者二塁一塁に置いてバッター俺。
亜美、見てろよ。予測通りの軌道の
バスで宿舎に直帰だった俺とは別に家族は大阪観光してから戻ってきた。宿舎近くのファミレスで夕食だった。
「試合は面白かった?」
俺は妹の美咲に聞いてみた。美咲はうん、とだけ答える。せっかく勝ったけどやっぱり伝わらないというか。俺に親を独占されているように感じてるのかなぁ。
「4点差ひっくり返して最後コールドまで持ち込んだから面白かったよ。健の
亜美がフォローする。
そうか、そういえばアイドルが毎年野球大会やってたんだっけ。中の人の時代は「少年隊」か「シブガキ隊」くらいまでだったなぁ。野球部でも振り付け真似してラジカセに合わせて踊ってるやついたよなぁ。⋯⋯胆沢だ。
現世の俺はテレビなぞ見る暇もないため興味もなかったが。立場を変えれば俺がジャニ一ズのコンサートに連れて行かれて楽しいか、と言われるとそれほど楽しめないだろうなぁ。
食事が終わって別れぎわ、亜美にとって最悪の事態が訪れる。
「あれ、
散歩する胆沢と後輩メンバーたちが俺たち家族と一緒にいる亜美と
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