「谷間世代」と呼ばれてしまった。
波乱のはじまり
お盆明け。最初の合同練習。3年生が卒団のあいさつをし、リトルリーグを卒団して正式にリトルシニアに加入した1年のあいさつと抱負を聞き、新しいチームの発足を祝い、1年間の健闘を誓った。
「春夏連覇という偉業を達成したことにより、我々は追われる立場になった。だが、常に
さあここで新
俺が覚悟に一人身を引き締めていると監督が意外な発言をする。
「えー、これまで新しい
……あれ?投票用紙には夏の大会でベンチ入りした8人の名前があり、当然俺の名前も入っていたのだが。
翌々日の合同練習。監督の発表に俺は耳を疑った。
「投票の結果、新
まあショックというよりはホッとした感の方が強い。俺は性格的にボスタイプよりも参謀タイプだからだ。でも自分を変えるきっかけにしたかったんだけどなぁ。
決まったことは決まったことなので切り替えていけばいい。
「もともと
「大学野球は『10』がキャプテンナンバーなんだし気にすんな。」
「そうだな。」
俺の半分ふざけた慰めに
俺は三塁手に
伊波さんが俺に直々に三塁守備を教えてやるとウッキウキになっていて笑った。
夏を制した先発二人がそっくりそのまま残留したので投手力には問題ないが、問題は打線だった。9月の支部秋季大会、4番に入ったのは胆沢だった。
1年生は黄金世代の活躍に憧れてやってきたリトルリーグで優秀な成績を収めた連中ばかりなので頼もしいが、引っ張っていく俺たち2年生の方に不安がありそうだ。すでに「谷間の世代」なんて言われはじめている。
そして俺の身体が不調にみまわれたのだ。それは突然訪れる。三塁守備でいきなりこけたのだ。身体にわきおこる違和感。俺の身体が言うこと聞かない?
送球が逸れる。狙ったところに球がいかない?
しばらくの間、手足がバラバラになったような感覚に
それは1日30分か1時間くらい夕方に俺を襲う。俺は野球の合同練習を休むことにした。
幸い、原因はすぐに判明した。すぐに併設の医療センターに連れて行かれケントの診察を受けたのだ。
「健、今の君の身長はいくつだい?」
もうすぐ180cmだけど。
「はは、前世の時よりだいぶ高くなったね。君の『中の人』はそんなに大きな身体を『運転』したことがないからね。それは『クラムジー症候群』ってやつだ。第二次性徴期に身長が急速に伸びすぎて脳の感覚と身体の反応が追いついていないのだよ。」
そういえば本で読んだことはあったな。
「なんともならんね。こいつは『病気』ではなく『
幸い春の選抜まで半年あるわけだから野球のトレーニングを離れて基礎トレーニングだけにすべきだね。」
「理事長。沢村がいないと、出場できるかどうかが怪しくなるのですが。」
俺に付き添った乃木監督が難しそうな顔でケントと話し混んでいる。そして大きくため息をつく。
「理事長のおっしゃる通り、お前は照準を甲子園に合わせるべきだな。チームの大黒柱に抜けられるのは痛いが仕方がない。」
いきなり、俺にピンチが訪れたのだ。
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