第10話

「ほら雨が上がったぞ」



「本当だ…いつの間に」


さっきまでの大雨が嘘のように青空が広がっていた



「で、こっちにこい」


カシックの後ろをついていくと大きな泉が広がっていた



「ここが泉…?」



「あぁそうだ。普段は俺が守っているが、今日は特別にくれてやる」


泉の水をくみ上げると俺に手渡しする

「とりあえず飲め」


「えっ…でも」



「毒味もせずにティナに渡すつもりか?いいから飲め。ティナの分は後で渡す」


確かにここが本当に泉の水なのかは分からない


毒でも持ち帰ればたまったものではない


「…分かった」

見る見るうちに先ほどの戦闘で負った擦り傷が治っていく


「傷が癒えて…」



「ここの泉は癒しをもたらす。だがここの水だけでは呪いを消す効果はないがな」



そういえばフィトリーゼ様は東と西の泉と言っていた


片方だけでは効果がないと知っていたのだろう


「後は西の国…か」


「あそこは森の妖精が守護している。聞き入れてくれるかは知らないがとりあえずこれを持っていけ」


銀製のペンダントを渡した



「…これは?」



「東の守護者…つまり俺が認めた証だ。呪いの解呪にも使うだろうから持っていくといい」



「呪いの解呪にも使うって…水だけじゃダメなのか?」



「その辺は詳しくないがおそらくティナに聞けばいいだろ?な?」



『ふふっ気づいていたんですか?』


「お、おまえ…急にいなくなったり、説明不足だったり…大事なことなら先に言えよ焦るだろうがよ」


『…時間がないので詳しくはイアンに手順をまとめてもらっています』

いつもの冗談な口調ではなく余裕がないようにも見えた

「時間がないって何があった?」



『ふふっ、大丈夫です。力を使いすぎたので少し眠るだけです』


本当は辛いはずなのに笑ってごまかすのは彼女の悪い癖だ

「ならいいが。お前の大丈夫は大体あてにならねえからな」


『…では引き続き西の泉と証を獲得してください』


そこで彼女の音声は途切れた



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