第4回魔女会作者人狼投稿作品集

ふたつかみふみ

鳥籠の小夜啼鳥(抜粋)

「都市治安維持部第0部隊”ポルターガイスト”所属、望・アイヒホルン・ナハティガル、これより作戦に入ります。全肢1番を要求します。」

右耳から指令を、左耳から「主よ、人の望みの喜びよ」を聞きながら行動を始める。通常つけている四つの義肢が1番兵装義肢隠しナイフに置換される。

今回のターゲットは、先日捕縛した傭兵グスタフ達が提供した情報による旧政府軍のアジトの一つである。この区画は"都市の目"未配備区画のため伝聞による情報しかない。その情報によるとこのアジトは人数規模がおよそ30乃至50人、主に物資調達を行う場所のようだ。この建物は古く、旧政府時代のものでありデータベースに見取り図はないため、現状間取りは分かっていない。今回の任務は、このアジトの潰滅及び責任者の拿捕が目的であるが、最悪前者のみの達成でもよしとされている。そして望は大抵、対象の完全無力化による潰滅のみを達成する。

望はアジトに入り、1階の旧政府軍構成員2名と接触する。

「どうしたお嬢ちゃん、迷子なら送ってやるからさっさとこの場-」

一人が言い終える前に右手の隠しナイフ、いわゆるアサシンブレードで喉元突き刺す。そして左足つま先に格納されているナイフでもう一人の左太股を突き刺し、切り裂いた。

「左手3番を要求します。」

望の左手の義肢が3番兵装義肢杭打ち機に置換される。そして太股を切り裂いた男に言う。

「問います。此処にいる人数、此処の建物の作りを教えてください。」

「お、お前は一体…」

「質問に答えてください。」

望は切り裂いた傷の開口部に杭を叩き込む。男が呻く。が、男は観念したようだ。

「1階ノーマ、か、各員へ、侵入者だ!備えろ!」

男が全員へ通達する。それを聞いた望は男の頭に杭を打ち込んだ。

「残念です。もう少しお話したかったんですが。」

別の階への移動手段は見たところ階段しかないようだ。

『こちら音響班、先程の男の声の反響の解析の結果、地下に地下室と思われる空洞はなし。』

『こちらサーモ班、1階の熱源のなかで人間のものと推測できる熱源は先程の2つのみ。』

「報告感謝します。」

この報告を聞いた望はその場で待っても仕方がないと判断し、階段を上ることにした。

次の階で攻撃が来ることは想定できる。そのため、

「左手2番、右手4番を要求します。」

望の左手の義肢が2番兵装盾斧へ、右手が4番兵装鈎縄へと置換される。階段を登り切る10段前に左手の盾とも斧ともなる兵装を構え、残りの階段を進む。想定通り銃弾が飛来する。

『こちらサーモ班、2階人間のものと推測できる熱源25。気をつけて。』

「感謝します。ちょっと多いですね。両足3番を要求します。」

両足の義肢が《杭打ち機》へと置換される。銃弾を盾で受けながら状況を確認する。盾の先はまっすぐ30m程度、部屋が6、廊下の幅が5m程度、天井間での高さも3m程度、おそらくこの廊下に25名がいるのだろう。

しばらく盾で受けた後、銃声が落ち着いたのを確認してから斜め上の天井へ右手の鈎付きワイヤーを射出する。ワイヤーを巻き取り進みつつ、すれ違う者の腹や肩や頭に両の足に備えられた杭を打ち込んでいく。8人に打ち込んだのち、ワイヤーを打ち込んだ場所の下で着地する。ちょうど廊下の真ん中当たりだ。

「これですこし減りましたかね。」

肩を砕かれ呻くもの、頭を砕かれた同志を見て戦意を喪失するものなどが出る。実質相手の戦力は半減したといっても過言ではない。ただし、

「右手、左足共に1番を要求します。」

同志が死のうが弾が尽きようが挑んで来る蛮勇もいる。望は右手と左足の義肢が《隠しナイフ》に置換されたのを確認して、襲ってきた1名の腹にアサシンブレードを突き刺すと、突き刺した右の手首を捻って横に切り裂きそのまま相手の腸を引き出す。そして突き飛ばし左足のナイフを顎に刺す。ついでに左足のナイフで腹を縦に裂いた。こうして臓物があらわになり、さらに戦意を喪失させる。

次に襲ってきた男を投げ飛ばし、自分の後ろの男と一緒に地面にたたき付けるとその2名の頭に右足の杭を打ち込んで絶命させる。他の生き残りはこれを見たことで、望に対する戦意を完全に消失してしまった。

望は襲ってきた男が持っていたアサルトライフルを拾うと、自分の近くで震えている男に話しかけた。

「問います。此処にいる人数、此処の建物の作りを教えてください。」

しかし男は膝を抱いて泣き、返答するそぶりも見せなかった。そのため望はアサルトライフルをその男の頭に叩き込んだ。アサルトライフルも男の頭も二つに割れた。

「ああ、ダメですね。使い物になりません。」

望は割れたアサルトライフルを捨て、生きている別の男にも話しかけた。しかし、彼は口から泡を出して返答をしなかったので頭に右足の杭を叩き込んだ。

さらに、次の男にも話しかけた。この男は辛うじて意識を持っており、望の質問に答えた。

「こ、此処には37人いる。この建物は3階建てで、に、2階と3階は同じ間取りで3階に此処の責任者ロベルトとヘルマンを含む10人がいる。」

「情報感謝します。」

「お、お、俺は情報を提供したぞ。だから命だけは助け-」

男が言い終わる前に、望は左手の斧を男の頭に叩き込んだ。

「それではあなたの役目は終わりです。お疲れ様でした。そもそも、あなたのように自分の組織を裏切るような人を生かしておく道理はありません。」

此処の情報を聞き出した望は、息の残っている者の側に行っては一つ一つ丁寧にその命を砕いていった。

望は2階の全員の死亡を確認するや、3階への階段を上っていった。

3階への10段手前で盾を構える。階段を後2段といったところで衝撃に襲われ階段から落下する。

『こちらサーモ班、3階に人間とおぼしき熱源4を確認。』

『こちら兵装班、先程の被弾により2番兵装の重大な損傷を確認。至急交換を進言する。』

「報告感謝します。左手2番、右手6番を要求します。」

左手の《盾斧》の再置換、及び右手の6番兵装レーザーへの置換が行われる。

再度階段を上り、10段前で盾を構える。そして階段を駆け登り、右手のレーザーで対物ライフルの射手を切断、そのまま炸薬部分をレーザーで焼いて廊下にいたものを吹き飛ばした。その爆発に巻き込まれ部屋が二つ炎上、両者ともこの建物の武器庫であったと思われる。

「右手1番を要求します。」

右手が《隠しナイフ》に置換される。望は死体を確認しようと廊下に出たが、そこに転ぶ4体分に対してもはや生存確認はいらなかった。それぞれの武器庫にも構成員がいたようで、合わせて2名分程度の残骸が転がっていた。

望は他の部屋を確認する。先程の爆発で扉が消えた部屋が多いが、一つだけ扉が飛んでいない部屋があった。右足の杭と左手の斧で扉を破壊して進入する。

『こちらサーモ班、室内に人間とおぼしき熱源4確認。』

「報告感謝します。」

室内に入り襲ってきた2名を、一人は喉元を裂きもう一人は脳天を斧で割ることで無力化する。

「お、お前は一体!?」

恰幅のよい男が問う。もう一人が拳銃を取り出すも望はその前腕部の腱を切り、喉元を裂いた。

「些末なことです。ただ、地獄で私の母に謝ってください。」

望はそういうと、最後の男の喉を裂き、腹部を十字に切った。

「作戦終了、帰還します。」

『お疲れ様でした。』

望の耳には「主よ、人の望みの喜びよ」だけが聞こえていた。

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