聖女は大食い?

 ファミレスに入った聖女様はメニューを見て目を輝かせていた。

「ここはすごいのです!」

 あれ?聖女様キャラ変わってませんか?

「本当になんでも頼んでもいいのですか!?」

「あ、あぁいいけど」

「お前は優秀な人間だ!本当は神の加護とか分け与えてやりたいんだけどな」

「いやそんな大層なものはいらないんだけど....」

「驚いた。お兄さんはそれが目当てで私を助けたんじゃないの?」

「いやそんなことはないよ。少し君から話を聞きたかっただけだ」

「そうなんだ....。とりあえずこのボタンを押せば店員さんが来てくれるの?」

「そうだな、それで来てくれた店員さんに食べたいものを頼めば運んできてくれる」

「それは便利なシステムだね」

 そんなことを言いながら聖女様は注文を始める。



 俺はそれを見て少し財布の心配を始める。何故かというと....。

「えっとこのエビグラタンとカルボナーラとボロネーゼとコーンのビザ、それとハンバーグステーキと....」

 そうこの聖女様とにかく大食いだったのだ。聖女様はアンや苺、リタと比べるとかなり小柄な方なのだが一体どこにそれだけ入るのか、俺にはわからない。

 運ばれてきたメニューが次から次にお腹に収まっていく様を俺は目にした。大食いなんて昔お笑い芸人がやっていたのしか見たことがなかったが、実際に見る驚きはこんな感じなのだなと思った。



「ふう、ご馳走様」

 食べ終わった聖女様が満足したような声を上げる。いやむしろこれで満足してなかったらなんなんだという話になるわけなのだが。

「でお兄さんは何が聞きたいのかな?」

「そうだな。お前が本当に聖女の伝説に出てくる聖女かどうか、とかか?」

 刹那、凄いプレッシャーが聖者様から放たれた気がした。

「やだなぁお兄さん....。私がそんな大それた存在なわけないじゃん!ただの敬虔な神の信者だよ」

「ただの、ね。そうか、また色々聞きたいことができたら聞きにくるよ」

「そうしてもらえると嬉しいかな?私もお兄さんとはなるべく良い関係で居たいしそこの精霊さんもね」

 彼女はそれだけ言い放つとファミレスを出ていった。



「リスタ、正直俺やばいと思ったぞあれ」

「まあそうじゃの。無邪気な子供に見えてきっちり化け物じゃな」

 リスタにはかなり高度な隠蔽魔法を使って姿を隠してもらっていたのだが彼女はそれすらも見抜いた。

「もしかしたら目が特殊なのかもしれぬな」

「それ色々と見えるってこと?」

「そうじゃな。魔法から見えてはいけないあの世のものまで全てが見えるようになる加護があったはずじゃ」

「そんなものがあるのか....。そうなると見た目に反して色々と経験してしまっているかもしれないわけか」

「そうかもしれないがそこは悠馬が気に病むところではないぞ。彼女は自分からそれを選んであるのじゃ」

 確かにそうかもしれないがそれはかなり残酷なことだと俺は思うのだった。

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