兄への想い

 突然だが私は昔からお兄ちゃんのことが好きだ。10年前に私が魔法を暴走させてしまい、両親を失った事故から私を救ってくれたのもお兄ちゃんだった。

 それが私とお兄ちゃんの間にある誓いだ。

 私が何か困った時は助けてもらう代わりに私もお兄ちゃんが困ったら助ける、ただの子供の約束のように思うかもしれないけど私にとってはこれが心の救いになった。

 だけど少し前からお兄ちゃんの様子が少しおかしいと思う。昔ならそこまでやらなかった事までやってのけたり、急に女の子を連れてきたりと色々おかしい。

 私はお兄ちゃんを疑いたくはないけどこのままだとお兄ちゃんがお兄ちゃんでなくなる気がしてとりあえず調べてみることにした。



 だが調べると言っても昔から私達を知っている人はどこを見渡してもいない。だから私は手始めにこのアルカディアで1番と言われる占い師さんの元へ行ってみることにした。だけど冷静に考えるとなんでこんな魔法化学が発展している町に占い師がいるんだろう?



「可愛いお嬢さん、今日はどうしたのかね?」

「あのちょっと占って欲しい人がいて....」

「ほう、自分を占って欲しいという人は沢山くるが人のことを占えという人は少ないの。いいだろう、名前を言うてみ」

「朝霧悠馬です」

 名前を伝えると占い師さんが少し驚いた顔をした。私は不思議に思いながら待っていると結果が出たと言われる。

「その男だが、本物ではない可能性があるぞ。あととんでもないほど運命力が強い」

 2つとも意味がわからなかった。本物でなければ私が普段話しているお兄ちゃんは誰なんだろう。

「理解できんという顔をしておるな。本物ではないというのは中身が入れ替わっとる可能性があるんじゃよ。あくまで非科学的な占いで出た結果だがの」

 私は茫然自失となった。

 占いの結果とはいえ、この占い師の言うことは殆ど当たっていると言われている。一部ではそういう魔法を開発テストしているのではないかと言われるぐらいだ。

 私はその結果にお礼を伝えると暫く自分の世界に閉じこもった。アンさんやお兄ちゃんにはバレないように。 

 勿論、アンさんやお兄ちゃんに誘われたら外に一緒に出かけはする。なるべくいつも通りの私になるように心がけて。



「全く、困ったわね。まさか悠馬君の妹さんが占いに来るとは思わなかった」

 丸まった背中を見送る私はそんなことを呟く。事件を起こしとっさに悲劇のヒロインを演じた私は暇つぶしに占いをやっていた。勿論、ゴエティアの力を使ってだが。

「もうすぐそっちにまた行くから待っててね。優馬君と妹ちゃん」

 私は見つけた新たな獲物に喜びを感じ舌舐めずりをした。

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