戦の神

《パリン》

 何かが壊れる音がした。これは『アルカディアの明日』の中だとギミック解除の音だった。つまりアンとリスタが外から破壊してくれたということだ。

 ふっと少しだけ見えたアンの顔に俺は安堵する。

「アン、頑張ったな。ありがとう」

 俺はそう独り呟く。



「悠馬、早くこれを終わらせるぞ」

「リスタ?どっから湧いてきた?」

「アンが開けた穴からじゃ。ぱっぱっとやるぞ。同じ攻略法は分かってあるんじゃろ?」

「ああわかってるよ。最奥にある、後はコアを破壊するだけだ。破壊するだけなんだが...」

「なんじゃ?歯切れの悪い。まさか結界を作るのに人間を使ったわけじゃなかろう?」

「リスタ、ビンゴだ。そのまさかが起こってる」

「それはまずいな。その人間自体が核になっている場合は最悪...」

「わかってる!その先は言わなくても最悪の事態は想定してるよ...」

 俺はつい声を荒げてしまう。こういうケースは生み出した人間自体を倒さないと終わらない。『アルカディアの明日』の中でもそうだった。

 ただ『アルカディアの明日』と違うところは実際に話した人間で俺がやらないと誰にもできないということだ。 



 俺はとりあえず前に進むことにした。今悩んでも仕方ないしそれに桜との約束もある。

「悠馬、前から模造天使3じゃ」

 俺は拳に氷を纏い殴り飛ばす。倒れるまで何度も。

 敵の模造天使の攻撃はリスタの対光属性魔法のおかげでほぼノーダメージで防げる。

 そうこうしているうちに最深部らしき扉に辿り着いた。



「リスタ、俺あそこの扉の奥嫌な予感がするんだけど」

「わしもじゃ。これは間違いなく模造品とはいえあいつらがいるだろうな」

 扉の前に着いた俺達は凄まじい嫌な予感がしていた。リスタの言い方が少し引っかかったが俺は扉を開く。

 扉を開いた俺達を待っていたのは正真正銘神だった。



 確かあれは『戦の神』とリスタと声が被る。

「なんじゃ、悠馬知ってあるのか」

「まあな。そんなことよりリスタが知っていたことの方が意外なんだけど」

「その辺はおいおいじゃ。今は目の前の化け物を倒すのが先決じゃ」

「そうだね。リスタ、情報の擦り合わせをしたい。俺の知っている戦の神は剣をただ振り回す脳筋で膨大な体力でこちらを削ってくるっていう戦法だったはずだ」

「まあ概ね間違っていないがあいつの真髄は剣自体にも能力がついていることだ。つまり本人はただのゴリラだが持っている剣によって能力が変わるわけじゃな。まあ模造品だからどこまで再現できているかがわからないわけじゃが」

「そうだな。流石に本当の戦の神みたいに全部の剣を使われると流石に勝てないが模造ならあるいは」

「そういうことじゃな。とりあえず殴られて確認してこい」



 俺は唐突にリスタによって前に放り出される。

 こちらをチラッと見た戦の神がこちらに話しかけてくる。

『汝侵入者なり。神の審判を受けよ』

 いきなり剣で切り掛かってくる。がしかし、速度が遅い。俺は後ろに少しステップをして避ける。が次の瞬間俺の肩から血が出てきた。剣の間合いからは完璧に逃げたはずだったのに。

「悠馬、こいつ1番厄介なもの持ち出してるぞ」

「奇遇だな。俺も今思い当たる剣が1つあった」

 これは次元ごと切り裂く次元剣だったか。『アルカディアの明日』では時の女神が戦の神に与えたという設定だったか。

 正直俺と相性がかなり悪い。やるとしたら俺が手を凍らせている間にリスタに処理して貰うのが良い訳だが、リスタも生憎アンに魔力を貸した代償としてあんまり残っていなさそうだ。



 とりあえず俺は全力で氷属性の根源魔法を練り上げる。

 1つ1つの魔法陣全て火力を上げられるように調整をする。

「はぁ!」

 そして俺は氷の根源魔法を放つ。全てがヒットしたのを見て俺は拳に氷を纏い戦の神に殴りかかる。

戦の神が崩れ落ち、膝をついた。

「リスタ!最後一緒に頼む!」

「小童ワシはもう魔力がほとんどないと言うであろうに。老人の扱いがなっておらんの」と少し嬉しそうなリスタが魔力を一緒に練ってくれる。

魔法陣を書き換え、火力を最大にこの1発で全てを終わらせる!

そう気合入れて放った魔法で完全に戦の神は機能を停止した。

「あはっ、やりますね。悠馬さん」

という言葉と共にリタが姿を現した。



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明日も二話更新です!頑張ります〜

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