リタと神
次の日の夕方教室に戻るとリタが1人で佇んでいた。そして突然質問を投げかけられる。
「悠馬さん、悪魔や魔神はどうして存在していると思いますか...?」
俺は桜からのお願いもあって少しドキドキしていた。
「悪魔や魔神がどうして存在しているか。難しい質問だな」
俺は考え込むフリをする。確か『アルカディアの明日』の中だと悪魔と呼ばれる存在や魔神、邪神はアルカディアの外の世界では善神や天使と崇められている神で、突出しているアルカディアの魔法文化に危機感を覚え手を出してきているだったか。
これはこの国のトップシークレットなのでもちろんそれをそのまま伝えるわけにはいかない。
「うーん単純に悪魔達から狙いやすいからか?」
「それは違います...。また貴方が真実に辿り着けたらお話しましょう。貴方ならきっと辿り着けます」
そんなことを言いながらリタは教室を出て行った。リタはこの話をどこまで知っているんだろうか。
アンと登校した俺は急に雄に声をかけられた。
「おはよう、悠馬くん。入学試験ぶりだね」
「秋野くんか。おはよう、どうした?」
「いやね、悠馬くんには入学式で助けられたし、この前のダンジョンでも助けられたし1つだけでも借りを返しておきたいんだ」
「俺はそんなことを借りにした覚えはないけど...」
「まあまあ僕が勝手にそう思ってるだけだからさ大人しく受け取っておいてよ」
「そこまで言うなら。でなんだ?受け取るって」
とそこで雄が俺に顔を寄せて耳打ちしてくる。
「情報だよ、リタさんと桜さんのね」
と言いながら胸ポケットに紙をねじ込んでくる。
「じゃあまたね。悠馬くん!」
「どうやらかなり好かれてるようでしたがあの人は確か同じクラスの方でダンジョンで助けた方でしたっけ?」
「ああそうだな。色々と借りを感じて返してくれるらしい」
そう言いながらさっきもらった紙を広げてみる。驚いた、隅から隅まで全て調べ上げている。出身や境遇得意な魔法や得意な戦闘スタイルまで。
「一体どうやったんだ...?」
ゲームの時よりも優秀な雄を見て俺はそう呟いた。
俺はその情報を見てあることに気がついた。リタの実家のことだ。リタは元々外の世界で神を祀る一族だったらしい。
なるほど、それであの質問かあいつはとっくに全て気付いていたわけだ。点と点が線で繋がった。桜の言っていた危険な人物というのはこの世界に真相を教えられると困るという意味での危険人物か。ただ情報によると記憶を失っているらしいが思い出したのか?
俺はそれを確認するべくリタの元へ向かった。
「よう、リタ」
リタを見つけた俺はすぐに話しかけた。
「どうしましたか?悠馬さん」
「いやね、1つ俺も昔面白いことを聞いたのを思い出して、話しておこうかなと」
「面白い話?なんですかそれは」
リタは少し不快そうな顔している。それはそうだろうな。自分の信仰していた神や天使が邪神や悪魔と呼ばれ、討伐されている世界に関する話だ。愉快なわけがない。
「そもそもさリタ、外の世界とアルカディアって何が違うと思う?」
「それは魔法技術の進歩や宗教観ですか?」
「それもあるが違う。外の世界は神を頼ってアルカディアは神を捨てた世界なんだよ」
俺は貰った情報をつなぎ合わせていく。
そもそもおかしい話だと思ってたんだ。『アルカディアの明日』中では聖職者がヒロインとして出てこない。悪魔やら邪神やらが絡む世界なら出てきてもおかしくは無いはずなのに。
ということは結論としては神への信仰を捨て魔法科学を信仰したと考えるのが妥当では無いかと思ったわけだ。
「神への信仰を捨てた?面白いことを言いますね。じゃあなんで貴方や周りの皆さんは魔法が使えているのでしょうか?」
「それは魔法科学の発展だ。魔法の原理は説明すると長くなるから今はしないが基本、大気中の魔力を使って発動する。外の世界ではその大気中の魔力が神によってばら撒かれている。だがここは違う。科学によって企業がばら撒いているんだよ」
「そんなことできるはずが...。道理に反します」
「残念だが道理に反することが科学でもあるんだよ。昔人間は火を起こすことを魔法と呼んだ。だがどうだ?今は魔法でも起こせるが別に他の手段でも火をつけることができるだろう?」
「うっ、確かにそれはそうだけど...。ならば神を捨てたことが正しいと証明して見せろ!」
そう言ったリタが魔法を詠唱し始める。するとリタが不思議な白い光に包まれ始める。
まずい、あれは『アルカディアの明日』でも出てきた大規模な模倣神と模倣天使を呼び出す結界魔法だったはず。逃げられるか?そう考えた瞬間俺はその白い光に包まれていた。
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少しだけ真面目話が続くかも?
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