初めてのダンジョン

 昨日の実戦訓練で俺達は明日ダンジョン探索に行くことが決まっていた。ダンジョン探索といえば『アルカディアの明日』ではボタンをポチポチするだけの作業だったがこの世界ではそうはいかないだろう。

『アルカディアの明日』の時に見えていたステータスや属性適正、使える魔法が当たり前といれば当たり前だが見えない。これがかなり問題だ。桜とリタの使える魔法がわからない。



 そんなことを考えているとふと1つ思い出した。

「あの2人って『アルカディアの明日』に出てなかったか?」

 そう確かにメインヒロインではないが探索パートと戦闘で使えるキャラとして2人が居た気がする。少し考えれば当たり前かもしれない。今は影が薄いとはいえあの雄と同じクラスなのだ。

「なんで今まで忘れてたんだろうな」

 この世界に来て日付が経てば立つほど『アルカディアの明日』に関する情報が頭から抜けていっている気がする。これは俺がアンと接するうちに平和ボケしているのかそれとも...。俺は少し怖くなってこのことについて考えるのをやめた。



「今日はダンジョンに入ってもらう...と言ってもここは学院で潜れるダンジョンで1番簡単だ。気を抜くなとは一応言うが、ぶっちゃけお前らなら簡単に突破できるだろう」

 それだけ俺達に対して先生の期待が大きいということだろう。

 俺とアン、桜とリタは雄達のパーティーの後、つまり最後にダンジョンに入ることになった。

 作戦らしい作戦はないが桜と俺が前衛、リタとアンが後衛ということだけを決めた。昨日思い出した記憶で桜は武器に自身の属性を付与する魔法や身体強化が得意だったと思う。

 そしてリタだが俺は使ったことがなく、知識がなかった。



 生憎だが『アルカディアの明日』の中では魔法を使えるなんていうプレイアブルキャラはごまんといた。メインヒロインもいるなかでリタを選べというのが無理な話だと俺は思う。

 ということでリタは何が使えるかまだわからないのでとりあえず後衛という訳だ。聞けばいいと思うかもしれないが実はこの世界で使える魔法なんかを聞くのは結構難しいのだ。それを嫌がる人も結構いる。俺はまだ生憎とこの二人に嫌われたくはない。



「悠馬さん、緊張しますね」

「いや多分大丈夫だろ」

「えぇ先生も大丈夫だろうといってましたし」

「うーんでも少し嫌な予感が...」

 そんな事を言いながら俺達はダンジョンの中へと足を進めた。

 初めは大した問題はなかったように思う。問題は少し進んだ先。



「なんか敵が少し強くなりました?」

 そんな桜の言葉を聞いた俺は敵に氷属性最低魔法を打ち込んでみる。

「本当だ、さっきまでこれで一発だったのにね。少しだけ警戒しながら進もうか」

 こうして俺達は少しだけ警戒レベルを上げる。

 そこからは難なくボス部屋まで到達したのだがそこで少し問題が発生した。前に入った雄達のパーティーの攻略がいつまで経っても終わらないのだ。通常ボス部屋は前のパーティーが終わった後に入るのが常識だ。

 だが今回ばかりは流石にアンがダンジョンに入る前に言っていた嫌な予感というものもあるし俺達はボス部屋に入ることにした。



 ボス部屋に入って驚いたのは大半のクラスメイトがそこで倒れていたことだ。

「おい!大丈夫か?」

 俺は少しふらついていた雄に声かける。

「悠馬君か、気を付けたほうがいい奥には...」

 そこで雄の意識が切れる。俺はパーティーメンバーに伝える。

「この奥に何かがいるらしいがこれだけの数が相手にしても倒せていないということは強敵であることが予想される。正直命を落とすかもしれない。命を落としたくなかったらここに残ってくれ」

 半ば俺のお願いだ。頼むからここに残ってくれ、そんな感じの。だがどこまで伝わったのか知らないがアンが真っ先に声を上げる。

「悠馬さん主と従者は一心同体ですよ。悠馬さんがいくというのであれば私も行きましょう」

「私も同じパーティーのよしみだ。付き合おう」

「私も悠馬さんなら大丈夫、だと思うのでいきます」

 三者三様答え方は違うがついてくるらしい。



「次の獲物はお前らかぁ」

 奥にいった俺達が遭遇したのは悪魔と呼ばれる存在だ。通常悪魔は下級、中級、上級に『アルカディアの明日』のなかではわけられていたように思う。

「獲物?それは違うな。俺達はお前を狩りに来たんだ」

 俺は虚勢を張りながら悪魔に近づく。最悪俺は死んでもいい、アン達だけは逃さねば。そう思いながら。


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お恥ずかしながら私、最近星評価とエピソード応援のシステムを理解しました。明日も二話更新するのでぜひ読んでくださいね〜!

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