苺とのデート
何故か俺の予定全無視で決まったデート?(苺曰く)の日になった。
順番は苺、リスタ、アンの順番らしい。
まずは苺からだ。俺は待ち合わせ場所に着いた。するとそこには普段の苺からは想像もできない美少女が立っていた。普段は結んである黒髪を降ろし、可愛らしいスカートを履いている。
「い、苺か?」
「そうだけど、お兄ちゃんなんで声震えてるの?」
「いや普段のお前と全然雰囲気違ったからさちょっとびっくりして、な」
「それはつまり私が可愛いってこと?」
苺が嬉しそうに言うので俺も仕方なく素直な感想を言う。
「端的にいうとそうだな。正直見惚れた」
「それは私も頑張った甲斐があったかな。さて行こうか」
苺に手を引かれて俺の初めてのデートが始まった。
「お兄ちゃんどっちが可愛いと思う?」
俺は早速人生最大の難所に立たされていた。何故かというとどちらも大変可愛いのだ。これを選ぶことは正直難しい。しかし、だ。俺は知っている。事前の知識ではどちらと選べない男性は嫌われやすいということを。つまり俺はどちらかを選ばないといけないわけで。
「俺は右だと思うぞ」
心を鬼にして冷静に言っているふりを装いながら俺はそう伝えた。
「お兄ちゃん実は両方似合うと思ってるでしょ」
妹にはそんな兄の苦悩も見抜かれていたようだ。
「よくわかったな。正直どっちもすごい可愛いと思うぞ」
「もうお兄ちゃんは昔から優柔不断なんだから」
苺は嬉しそうにそんなことを言う。
昔、か。俺は苺の知ってる朝霧悠馬じゃないんだよとは今はとても伝えられない。いや俺は怖いんだ、この関係が崩れるのが。苺には軽蔑されるだろうけどいつかは伝えないとなと決心することができた。
「あっお兄ちゃん見てみて。可愛いこれ」
「あぁ可愛いな。こういうの見てると飼いたくなるんだよな」
苺と次に来たのはペットフロアだ。そして今現在妹様がメロメロなのは猫だ。いや勿論猫もとても可愛いんだがそれ以上に猫に合わせて動いてる苺も可愛いよなんで口が裂けても俺に言う勇気はないのだった。
「そろそろ時間だ」
そう苺は呟く。リスタとの交代の時間が迫っているのだろう。
「お兄ちゃんそろそろリスタさんと交代するけど最後に一つだけ伝えてもいい?」
苺から俺に伝えたいこと?と思いながらも俺は「いいよ」と了承する。そこから飛び出たのはとんでもない言葉だった。
「私ね、実はお兄ちゃんのことが好きみたいなんだ」
「俺も好きだぞ」
「お兄ちゃん違うよ、ライクじゃなくてラブの方だよ。全くそういう鈍感なところだぞ」
突然苺から告白された俺は脳がフリーズした。
なんとなく好意を向けられていたのは気づいていた。だがあの『アルカディアの明日』ではあれだけ難しかった苺が自分から告白をするというのは俺にはにわかには信じ難かった。
「こういうこと聞くのってずるいと思うし最低だと思うんだけど俺のどこがそんなにいいんだ?」
「もう本当にそういうところ、鈍感すぎ。自分で答え探してみて。ともかく私はこれで」
と去っていく苺の顔は苺の様に真っ赤に染まっていたように見えた。
ちなみにリスタとのデートはデートの意味をほぼ理解していないリスタとほとんど食べ物を食べて終わったのはここだけのお話で終わらせておこう。
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