第110話 ド派手な青髪ショートの白ギャル

 「わー! オ、オリヴェイラ様! お待たせしてすいません! お姉ちゃんがうちに用事があるお客様を連れて来たと、派遣軍の人から聞いて急いでお風呂から上がってきました!」


 応接室で雑談をしながら待つこと十数分。

 青い髪のショートカットで、同い年ぐらいの派手な女性……というか俺達がいた元の世界では、ギャルと呼ばれる種類の女性が、応接室の扉を勢いよく開け、かなり慌てた様子で入って来た。


 ……あの国分こくぶんが完全に下手に出ているし、今来たギャルも、オリヴェイラ様を少し待たせた程度でこの慌てっぷりとなると、この国に住んでいる人間は、アルラギア派遣軍の総司令官であるオリヴェイラ様に、絶対敬語で絶対服従なんだな。


 ……まあ、そんなことを考えている俺も自然とオリヴェイラ様って、呼んじゃってるけど。


 しっかし……今入ってきたギャル……かなり派手だな……ド派手だよ。

 どこがとかは言わないけど。

 ……物凄いプロポーションだな。

 グラビアアイドルかよ。

 格好もタンクトップみたいな服を着て、ホットパンツみたいなズボンを履いてるし。


 髪も青色だし、巨乳というか……爆乳というか……。

 誰だこのギャル?


 俺は麗蒼れあに会いに来たはずなんだが……麗蒼よりもド派手なギャルが、なんか現れたぞ?


 「……おいおい、なんだその格好は? レア殿? 客人が来ていると聞いていたんじゃないのか?」

 「オリヴェイラ様をお待たせする訳には……」

 「我々を待たせるよりも、その格好で我々の前へ出てくる方が失礼だ。防具を着て来い」

 「エヘヘ……すいません! すぐ着てきます! お客様も待ってて下さい!」


 そう言うとギャルは、こちらを見向きもせず応接室を出て行った。

 ……いや、そんなことよりも。

 オリヴェイラ様、あのギャルのことをレアって呼んでいたよな……。

 え、まさか?


 「……はあ、すまない。もう少し、お待ち頂こう。あんな魅力的な女性なのに、隙だらけで男を知らず知らずの内に誘惑してしまうのが、レア殿の欠点だ。ジン……殿だったな? あなたも思わず見惚れてしまったのでは? ずっと熱い視線でレア殿を見ていたな」

 「……フッ」

 「…………」


 オリヴェイラ様に濡れ衣を着せられ、国分には鼻で笑われ……そして麗翠れみには私の前で、なに私の妹をエロい目で見てんだ? と言われんばかりに睨まれる。


 いやいや、待てお前ら。

 お前らはずっと会っていたから、分かるかもしれないけどな。


 「……え? あのギャル、麗蒼だったのか?」

 「……? ギャ……ル……?」

 「ああ、すいません。俺が知っている麗蒼は派手と言えば派手でしたけど、あそこまで派手な女性じゃなかったので、気付きませんでした。まあ、最後に彼女と会ったのは二年以上も前の話ですから」


 異世界の人間であるオリヴェイラ様に、ギャルなんて言って通じるわけがないので、派手な女性だと言い換えながら、遠回しに俺が熱い視線で麗蒼を見ていたという誤解を解く。


 実際、二年以上会っていないわけだし、髪型や化粧の仕方などが変わっていれば、分からなくてもしょうがない。

 人によっては、たった二年程度会っていなかったぐらいで、誰だか分からなくなるなんて薄情な奴だと感じる人もいるのかもしれないが、あそこまでイメチェンされるとな。


 元の世界での麗蒼の髪型は、少しパーマがかかった水色髪のミディアムだったが、現在の彼女は青色髪のショートカット。

 更に、元の世界では黒ギャルと呼ばれるギャルに近い褐色肌だったのに、今じゃむしろ色黒とは正反対の美白……いわゆる白ギャルと呼ばれるギャルへと変わっていた。


 更にプロポーションもかなり変わったとなれば、そりゃ気づくわけねえな。

 俺が女性の変化に鈍感なのかもしれないが、たった二年と数ヶ月程度会ってなかったぐらいで、ここまで変わるかね?


 俺や国分みたいに、容姿も性格もほとんど全く変わっていない人間からすると、麗蒼は変わり過ぎた。

 ……それと双子なのに、麗翠と麗蒼で成長度合いが違い過ぎませんかね……。


 「あら? その割には大分彼女の身体を舐め回すように見ていたみたいだけど? 気付かない振りをして言い訳するのは感心しないわね?」

 「やっぱじんも大きい方が……」


 ……最後、少し余計なことを考えたのがバレたのか、本当は気付いてたんじゃないか? と国分と麗翠に疑われる。

 誰が舐め回すように見ていただって?

 適当なことを言うんじゃねえぞ? 国分は?


 麗翠さんは、ご愁傷様です。


 「いやいや、麗蒼に会いに来たのにショートカットの白ギャルが来たら、そりゃ誰だコイツ……? ってなって見ちゃうだろ? あんだけ容姿が変わったんなら教えろよ」

 「ギャ……ル……? というのは分からないが、我々が彼女と初めて会った頃には、今の彼女の容姿とほとんど変わらなかったな。なあ? エリナ殿?」

 「ええ、そうですね。彼女もわたくし達と同じ二十歳……大人の年齢を迎えたのに、いつまでも学生気分で肌を焼いているほどバカではないわ」

 「……あっそ」


 ……別に黒ギャルでも良いだろ。

 相変わらず国分は……。

 それに、二十歳だったら大学生や専門学生だったかもしれないし。


 まあ、元の世界で二十歳を迎えているという前提だけどな。

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