第69話 神堂 皇聖 後編
「……悪いが、俺は
まあ、実際本当に何にも知らねえしな。
「あー大丈夫だぜ上様。ラルジュード帝国って所に天ケ浦達がいんのは分かってるんだ」
「ラルジュード帝国……?」
神堂が天ケ浦達の居場所として話した国に聞き覚えがあった。
どこで聞いたんだっけ?
あ……セトロベイーナ王国の女王様に身体を求める親書を出した
女王様がアルラギア帝国と一緒に名前を挙げてたよな。
……ん? それじゃまさか。
「おい、神堂。まさかだとは思うが、天ケ浦達も
帝国と聞くと、あまりイメージがよろしくない。
主に岸田達を使って好き勝手やっているアルラギア帝国のせいだと思うが。
「さあ? そこまでは俺も知らね。ただ、いずれ岸田達がいるアルラギア帝国と天ケ浦達のいるラルジュード帝国は戦争になるみたいだぜ? その時は当然、どっちの帝国も戦争に勇者パーティーを投入すると思うぜ?」
「だろうな。他国への侵略行為にアルラギア帝国が勇者パーティーを使っている以上、アルラギア帝国と戦争になれば、ラルジュード帝国だって勇者パーティーを使わざるを得ないに決まっている」
まあそうなったら、どっちの帝国も多くの戦死者が出て、とんでもない被害になりそうだが。
そんな心配をしている俺とは違って、神堂は笑って俺に話す。
「まあ、その前に天ケ浦達は俺が殺すからな。戦争なんて起きねえよ」
「……は?」
一体急に何を言い出すんだ神堂は?
天ケ浦達を殺す?
「決まってるだろ? 最強と言っているだけじゃ、周りは最強とは認めてくれねえ。最強を殺した時こそ、周りが最強と認めてくれるんだぜ? つまり、天ケ浦達を殺せば、俺が最強って事になるだろ?」
「…………」
相変わらず神堂の言っている事は理解が出来ない。
二年以上経ってもやはり神堂は神堂のままなのか。
魔王軍の幹部討伐してくれてありがとう!
って神堂に感謝していた俺がバカみたいじゃねえかよ。
「俺なら出来るぜ? なんせ俺には
そう宣言すると、神堂は腰に下げていた二つの剣を俺に見せた。
「女神の黄って事は……神堂が三番目か」
「あ? 三番目? 違うだろ? 俺が最強に決まってるだろ? 上様から逃げるレベルの強さの岸田と女の天ケ浦が俺より強いなんて評価が正しい訳がねえ」
俺に三番目と言われたのが、気に食わなかったのか、露骨に不機嫌になって俺を睨む神堂。
……虹の七色は、上から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫だ。
ってことは、女神の黄のお前はイーリスから三番目の評価ってことでやっぱり間違いねえじゃねえか。
ん? 神堂が三番目って事は……?
「ちょっと待てよ? そうなるとさっき神堂が話していた事が合っているとすれば、岸田が二番目……
は? マジかよ?
やっぱりイーリスの評価間違ってねえか?
神堂の方が岸田よりは性格良……た、多分性格良いし、全てにおいて上だろ。
……まあ、チームワークという面では神堂の惨敗かもしれんが。
「今更気付いたのか? 上様? だから、わざわざ
「露骨に興味を無くすなよ……確かに岸田と同じパーティーメンバーだった
「あー……もうどうでも良いし、さっさともう一つの用事終わらせて俺帰っていい?」
そう言うと神堂は俺との話を打ち切り、突然魔王の剣を抜いた。
「……は? お前何するつもりだ?」
おいおい、まさかの魔王の剣と連続バトルかよ?
流石に焦った俺は、ずっと刺しっぱなしにしていた
「あー違う違う。上様とは戦う気無いって。ただ、ちょっとな? アブソープション」
戦う意思は無いと言いながら、謎の魔法を唱える神堂。
アブソープションって事は吸収か?
何をするつもりなんだ?
と思ったら神堂は、いつの間にか魔王の剣を鞘に収めているし。
マジで何やったんだ?
「用事終わったから帰るわ」
そう言い残し、神堂は俺の目の前から立ち去った。
せめて何やったか言ってけよ。
本当に勝手な奴だ。
……変に引き止めて戦うハメになるのはゴメンだから追わないけど。
とりあえず、色々一段落したから女王様達を迎えに行くか。
伊東が持っていた魔王の剣をどうするかも聞かなきゃだし……ってあれ?
近くに転がっていたはずの魔王の剣が無い。
おい、まさか。
神堂の仕業か?
あのアブソープションって魔法で、伊東の魔王の剣を自分の魔王の剣に吸収させたのか?
神堂のもう一つの用事って、まさか魔王の剣を手に入れる事だったのかよ!
一体、何のために?
まさか、最強になる……天ケ浦を本気で殺すためなのか?
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