第61話 淫虐の魔女フィスフェレム
「
階段を登った先にあった屋上に繋がる扉の前で思わず呟いてしまった。
けしかけた張本人は俺だ。
でも佐藤があんな見え見えの挑発に引っ掛かるとは流石に思っていなかった。
まあ……フィスフェレムの明らかに嘘っぽい言葉に引っ掛かって人間を裏切る辺り何となく察していたが。
もういいや、絶対助けねえ。
裏切った人間でも、有能ならどこかで俺の役に立つ事があるかもしれんが、あそこまでバカで無能だと助ける気が起きねえ。
しかも元クラスメイトとはいえ大して仲良くない自覚はあったが、向こうから嫌いだとハッキリ言われたんだ。
「でも、佐藤の女神の加護を奪ったお陰で、何となくパワーアップした気がするから、そこだけ感謝しとくか」
……あくまで、何となくだがな。
一応佐藤に感謝しつつ、屋上への扉を開く。
◇
扉を開くと、屋上には何も無かった。
見える景色も、山か森か。
山の中に建っていた屋敷なので当然ではあるが。
「ここまで、よく辿り着いたのじゃ。女神の加護を持つ者よ」
「!?」
突然、話し掛けられて勿論ビックリしたが、それよりももっとびっくりしたのは、その声の主が幼女にしか見えない姿だったことだ。
銀色の髪で、元の世界……俺のいた世界で例えるならば、ロリータファッションってやつに近い服を着ていた。
「お前がまさか……」
「いかにも。わらわが魔王軍幹部、
……う、嘘だ……と言いたい所だが、どうやら本物みたいだな。
威圧感が他の雑魚モンスター達とは違う。
後、何でよだれ垂らしながら舌なめずりしてるんだよ汚えな。
「ある程度鍛えられた身体……髪型はわらわの好みでは無いが、顔はタイプじゃのう……しかも、美味そうな精をたっぷり溜め込んで……ジュルリ」
フィスフェレムは俺の身体を舐めるように見ながら、舌なめずりを続ける。
負けるなど、毛ほども思っていないのだろう。
俺に勝った後、どうやって楽しむかしか頭に無さそうなのがその証拠だ。
「そんなに油断してて良いのか? 俺を
「ふふふ……分かっておる。わらわも久し振りの強敵に思わず濡れてしまった程なのじゃ。そんな事を言わせるでない♡」
フィスフェレムは、指を咥えながら誘惑するように腰をくねらせている。
……な、何だコイツ……本当に魔王軍幹部か?
魔王軍幹部にしては、緩……!
「エクスチェンジ!
「……ほう」
危ない。
間一髪だった。
危うく緩い会話の流れから、意識を持っていかれそうになったぜ。
「まさか、魔王軍の幹部クラスが不意打ちしてくるとはな」
「わらわの誘惑に掛からんとは、流石じゃのう……サキュバスでは話にならない訳じゃ。そして、あのオーゼキなどという忌々しい女勇者の
厄介はこっちのセリフだ。
フィスフェレムの誘惑はサキュバスの誘惑とは比べ物にならない。
気付きにくい上に強力……魔王軍の幹部なだけはある。
「ふむ……これは……わらわがちと分が悪いのう……わらわの
「その手には乗んねーよ。フィスフェレム。流石に二度同じ攻撃は食らわねえ」
チッと舌打ちをするフィスフェレム。
本当に隙あらば誘惑してくるな。
後、フィスフェレムからも
「……エクスチェンジ、
今度は俺からだ。
フィスフェレムが少し考えた隙に女神の紫の最大の猛毒攻撃を仕掛ける。
そしてすぐさま女神の藍へ戻す。
女神の加護持ちだった
流石のフィスフェレムもノーダメージでは済まないはず。
「ふふふ……不意打ちで攻撃し返す勇者は初めてじゃ♡ しかも、猛毒……♡」
「ディサイド! ……魔王軍幹部のクセに不意打ち誘惑を連発してくる奴には言われたくねえな」
クソっ……ほとんど効いていない。
フィスフェレムに女神の紫の毒は……ほとんど効かないと思った方が良い。
女神の紫最大攻撃のデッドリーポイズンで少しのダメージしか与えられなかった時点で諦めるしかない。
女神の藍で誘惑を防ぎ続けても、お互いダメージが与えられないまま、時間が過ぎるだけ。
なら……危険だけど、やるしかねえよな。
「エクスチェンジ。
「……それが噂の黒い女神の剣なのじゃな」
女神の黒に変えた瞬間、フィスフェレムの顔付きが変わる。
「なんと禍々しく……美しい……それでいて強さを感じる……欲しいのう。女神の怒り、女神の悲しみ、女神の絶望……女神の負の感情が詰まった素晴らしい剣じゃのう!」
ニタァ……と気持ちの悪い笑みを浮かべるフィスフェレム。
そして。
「のう……その剣、かつての知り合いと交換はどうじゃ?」
パチンとフィスフェレムが指を鳴らす。
すると突然現れたのは目隠しなど拘束をされている佐藤だった。
やはり、俺の予想通り罰を受けていたらしい。
「サトーにはわらわの誘惑を掛けている。つまり、どういう事か分かるのう? 断ればわらわの指示で自殺させる事も可能……」
「自殺させて良いぞ。その男に女神の黒と同程度の価値は無い」
女神の黒と佐藤を交換だなんてとんでもない。
フィスフェレムの提案を遮って断った。
「ふふふ……サトー♡ 最後まで使えん男じゃ! もういいのじゃ! あの黒い剣はわらわが自らの手で手に入れるのじゃ! お主はもう用済みじゃ!」
パチンとフィスフェレムがまた指を鳴らす。
すると、佐藤が立ち上がってフィスフェレムの元へフラフラと近づく。
そして、フィスフェレムへ跪く。
「この男はもう女神の加護を持ってないのじゃろ? じゃから、わらわが少し力をいれたらもう終わりじゃ」
そう言うと、フィスフェレムは佐藤の頭をまるでリンゴのように握り潰した。
「ふふふ……どうじゃ、怖いじゃろ? その黒い剣を渡す気になったじゃろ?」
「全然」
「ふふふ……いい……いいのじゃ……久し振りに濡れる相手と戦えそうなのじゃ……♡」
血に塗れ、よだれを垂らしながら、先程以上にニヤニヤと笑うフィスフェレム。
腹を括れ、こっからはお互い。
「殺す」
「奪う」
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