第49話 狂い始める帝国の計画、岸田の誤算 1
ジンとリベッネがセトロベイーナ最東端の街、ジェノニアへ向かっている頃。
アルラギア帝国の勇者である
◇
「オレ様達が、何故ここにいるか分かるか? いや、分かってるよなオッサン?」
アルラギア帝国の勇者パーティーである岸田達は、セトロベイーナ王国とアルラギア帝国の内通者である、セトロベイーナのとある街の領主の家で怒り狂っていた。
あまりにも聞いていた話と違い過ぎて、自分達の計画が大きく狂った。
だが、岸田達が怒り狂う理由はそれだけではない。
「はーマジあり得ないわー。オッサンの嘘のせいでウチらマジで死にかけたんですけどー?」
「しかも、あーし達の貴重なパシリが死んだ上に、荷物持ちと
内通者である領主は、五十嵐と園部の言葉に戸惑いと焦りを隠せなかった。
自分が手に入れた情報だと、フィスフェレムの誘惑によって操られた騎士サトーと剣士イトーが勇者オーゼキを瀕死状態に追い込み、回復術士のスズキは自分と同じアルラギア帝国の内通者の為、セトロベイーナの勇者パーティーは実質壊滅状態。
つまり、セトロベイーナの女王であるセトロベイーナ三世のいる宮殿には、女神の加護を持った者はもういない。
そう判断したから、アルラギア帝国の勇者パーティーである岸田達に情報を流した。
「オッサンは、オレ様達の仲間だと思っていたんだけどなあ? まさか、あんな強力な女神の加護を持った人間を潜ませていたとはな? 何か言い訳あるか?」
岸田は、自らが持つ
その岸田の横で、五十嵐と園部は殺せ、殺せと手拍子しながらコールしていた。
「ち、違うんだ! わ、私も知らなかったんだ! ま、まさか勇者オーゼキ以外にもそんな強力な女神の加護を持った人間がセトロベイーナ王国内ににいるなんて! だっておかしいじゃないか! そんな人間がいるなら、何故勇者オーゼキと共にフィスフェレム討伐に同行していないんだ!?」
「……」
領主の言葉に引っ掛かる所があったのか、岸田は女神の剣を鞘に収める。
「えー? ユースケ、このオッサン殺さないのー?」
「あーしもリカに同意〜」
領主を殺さない岸田を、五十嵐と園部は批判する。
そんな二人に落ち着けと言いながら、岸田は考えを話し始める。
「いや、確かにオッサンの言ってる通りだと思ってな。あんな強力な女神の加護を持った人間がいるんなら、フィスフェレム討伐に参加させねえのはおかしくね?」
「あー……確かに。それに、あのクソブスもそんな人間がここにいるなんて話してなかったよねー?」
「クソブスって、貞子の事?」
「あーそうそう」
「そういや、
クソブス、貞子、裏切り者。
岸田達に散々なアダ名で呼ばれているのは、セトロベイーナ王国勇者パーティーの一人、……一人だった回復術士のスズキこと、
彼女の評判はセトロベイーナ王国内でも芳しくなかった。
常人よりかなり長い前髪で、常に顔を隠す不気味な容姿に加え、回復術士でありながら擦り傷や切り傷程度の怪我しか治せず、特に強力な女神の加護を持っていなかった為、勇者である
そこで、彼女はフィスフェレム討伐失敗による混乱を利用して、セトロベイーナ王国から逃げ出し、女神の剣を持った勇者が活躍しているだけでなく、自分の仕える国を裏切った女神の加護を持つ人間。
つまり、元クラスメイトが多数いるという話をセトロベイーナ王国の軍の人間から聞いていた為、アルラギア帝国に亡命したのだった。
アルラギア帝国に何とか辿り着いた彼女は、必死で元クラスメイトを探した。
すると、女神の加護のお陰なのか、簡単に岸田を始めとした元クラスメイトの人間に出会う事が出来たのである。
大した女神の加護は持っていない。
それは事実だったが、彼女には女神の加護の一つである、忌避の力があった。
その為、彼女には留守番という役目が与えられた。
アルラギア帝国内に女神の加護を持った人間は六人いたが、忌避の力を持つ人間を必ず一人は残しておかなければならないので、忌避の力を持つ寺原がいつも留守番をしていた。
だが、そうなると五十嵐と園部が自分の荷物を持たなければならない。
それが面倒臭いから荷物持ちとして寺原も連れて行きたいと五十嵐と園部が我儘を言ってくるので、丁度岸田は忌避の力を持つ人間を探していた為、岸田は忌避の力を持つ彼女、鈴木桃奈を受け入れるように、アルラギア帝国の帝、ティンバーレイク・アルラギアに進言し、その進言のお陰で、彼女はアルラギア帝国勇者パーティーの留守番という役目を手に入れた。
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