第45話 元の世界で俺に負けた奴は、やっぱり異世界でも俺に負ける
……まあ、そのクセにケンカが全く強くないんですけどね。
教師達からの信頼も全くなかったから、中学時代に俺とのケンカに負けてケガした時も、まともに取り合って貰えなかったという一件があってから、一方的に俺を逆恨みしている大バカ野郎だ。
自業自得だろ。
成績が悪い上に素行も悪い生徒の味方をするほど先生は暇じゃねえぞ。
そしてその隣にいるサツキちゃんと呼ばれていた女。
恐らくだが、同じクラスだった
元の世界では黒髪だったが、こっちでは茶髪にしたのか。
小柄で髪型はボブヘアー、常におどおどしている奴って印象しかない。
あー後、岸田と付き合っている化粧が濃くて、自称サバサバ系(ただ性格が悪いだけ)の
そして、この二人の足元で死んでいるマユミという女は、これも同じクラスだった
高木も寺原と同じ様に五十嵐と園部のパシリだった記憶がある。
代わりに宿題とかをやらされていたのを何回も見たことがある。
断れば良いのに。
……って、待てよ?
岸田、亜形、五十嵐、園部は元の世界でつるんでいた連中だから分かる。
だが、寺原と高木はパシらされていただけで、この四人とは仲良くはない。
何故、一緒に行動していたんだ?
それに本来、勇者パーティーは四人一組。
亜形、寺原のやり取りとセトロベイーナの人間の話から推測すると、岸田をリーダーとするアルラギア帝国の勇者パーティーは最低でも六人もいる事になる。
……あ、仕えていた国を裏切った派手で岸田にお似合いのクズな女達ってもしかして、五十嵐と園部の事か。
それなら、あくまで推測だけど元々のアルラギア帝国の勇者パーティーは岸田、亜形、寺原、高木の四人で、五十嵐と園部が仕えていた国を裏切って加入したって形で、アルラギア帝国の勇者パーティーが六人に増えたのかもしれん。
そんな予想を立て、じゃあどうやってこの二人を倒すか考えながら、瓦礫と化した城門の方へと進む。
「……ウ、ソ……でしょ」
突然、寺原が戸惑い出した。
俺に気付いたか?
まあ、そりゃそうだ。
俺はあくまでこの世界じゃ余り物。
事情を知らない寺原は、俺が死んでいると思っていても仕方無い。
「サツキちゃんは、ここで見ててオッケーオッケー! さーってと! 今回もワンパンで行くっしょ!」
「あ……」
そんな寺原をよそに、俺をこの世界の人間だと思い込んでいる亜形は突っ込んで来た。
流石、寺原。
そのおどおどしている性格は直ってねえな。
誰かに意見とかしている姿も見た事ねえから、亜形を止められる訳無いと思っていたよ。
そして亜形、やっぱりお前って頭悪いな。
お前に関してだけは言えるよ。
人は見た目によるって。
「激遅! やっぱこの世界の人間って弱過ぎっしょ!」
女神の加護による力なのかは知らんが、亜形はあっという間に俺の前へ来た。
そして、俺に剣を振り下ろす。
あーダメダメ。
マジでダメ。
何だその剣の使い方?
チャンバラごっこする小学生か?
「へ……?」
無情にも亜形の振り下ろした剣は、俺の
当たり前だ。
亜形の持っている剣も、恐らくイーリスの手で作られた物なんだろうが、
「中学時代を思い出すな? 亜形?」
「は? テメー誰だよ? って!? う、
「どこぞのただただ突っ込んで来るだけの頭が悪い奴よりは頭の出来も、運動能力も格上なんでな? そりゃもう、余裕で」
「チッ! 余り物が何で生きてんだよ! 死ね! 剣が無くても大丈夫っしょ! 拳で十分だっつーの!」
大嫌いな俺が生きていて、冷静さを失っているのか、はたまた本気で己の拳で十分だと思っているのかは分からないが、亜形は逃げるどころか女神の剣を持つ俺に殴り掛かって来た。
女神の黒で戦う意味が無いなもう。
それなら試してみるとするか、ケントから奪った
「エクスチェンジ! 女神の紫! デッドリーポイズン!」
……女神の黒の欠点もう一個あったわ。
奪った他の女神の剣を使うにはいちいちエクスチェンジって言わないといけないとか……。
何はともあれ、女神の紫を使ってみた訳だが……効き目はどうだ?
亜形のへなちょこパンチを躱して距離を取る。
もちろん、亜形は俺を追おうとする。
しかし、その時だった。
「うぶっ……!? く、苦しい……う、上野テ……メー……ブフォッ!!!」
亜形は突如苦しみ出して、吐血した。
ほう……凄いな、女神の紫。
これは使える。
あ、そういえば!
デッドリーポイズンって確か猛毒とかそんな意味だった気がする!
いかんいかん、俺とした事が。
そんな事にも気付かずに間違って亜形に猛毒を掛けてしまうなんて!
麻痺辺りなら、パラジーとかで良かったのに!
ま、どうでも良いか。
俺を殺そうとした奴の事なんて。
「大人しくお前は、そこで苦しみながら這いつくばっていろ。それがお似合いだよ。中学の時も俺にケンカ売ってそうなってるから平気だろ? 二回目だぜ? 二回目」
そう言って、亜形の元を離れた。
亜形は、猛毒が体に回っているのでバタバタと苦しみながら、吐血し続けている為か俺に何も言い返せない。
「俺の見間違いじゃ無ければ、お前は寺原五月だな?」
寺原だとは分かっていたが、一応確認の為に本人確認をした。
すると黙って頷き、俺の元へ来る。
「上野くん……生きていたんだね」
「お前こそ、岸田達と仲良くこの世界の人間を殺しまくっていたみたいだな」
「サツキは殺してない!」
「でも、止めなかったんだろ?」
「……」
俺の意地悪な問いかけに寺原は黙る。
はいはい、都合悪くなると黙るのも寺原の特徴でしたね。
まあ、分かっているけどさ。
寺原が岸田達を止められる人間じゃない事も、岸田達が寺原に意見されたぐらいで、この世界の人間を殺す事を辞めるような人間じゃない事も。
「何はともあれ、お前は岸田達と同じパーティーのメンバーだった。亜形みたいになりたくなければ、大人しく付いて来て貰うぜ?」
「……うん。そうします」
聞きたい事なんか、山程ある。
それにセトロベイーナの人間も寺原に聞きたい事があるだろう。
報復に寺原が処刑なんて話になったら知らん。
これで良いのかは分からないが、とりあえず女王様の元へ寺原を連れて行く事にした。
「あ……あ……」
宮殿へ向かう道中。
猛毒による吐血で、失血死した亜形圭を見て、寺原五月が失禁してしまった事も、亜形圭の女神の加護を手に入れた事も、ジンは気付く事なく怯える寺原と共に、セトロベイーナの人間とサンドラとメリサが待つ客間に戻るのだった。
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