第34話 チェンツオーネ到着

「ほら、着きましたよ。サンドラさんもメリサさんも起きてください」

「アハハ……このお二人にはちょっと強く魔法を掛けすぎたかもしれません」


 セトロベイーナ王国の王都チェンツオーネに到着し、親書を渡す相手セトロベイーナの女王様がいる城にも着いたのに、サンドラさんもメリサさんも全く起きる気配がない。


「まだ朝ですから、女王様も起きたばっかりでしょうし、馬車を城門の前へ置いて置きましょうか」

「女王ちゃん長いからなー朝の準備とか。城門の前で待ってて良いでしょ」

「ね、ねえ。急に来るなって門番達が怒っているよ? 二人ともちょっと来てよ」


 女兵士の一人が、門番の兵士に怒られたのか涙目になりながら、俺と喋っていた二人の女兵士を呼びに来る。

 確かにセトロベイーナの女王様へ親書を渡しに行きますなんて連絡してないからな。

 元の世界みたく電話みたいな連絡手段が無いからどうしようも無いけどね。


「えー……せっかくお望みのボルチオール王国の勇者パーティー引き連れて来たのに? 感謝が足りなくない?」

「すいません……少し門番達が文句言っているみたいなので、話をしてきます……。少々お待ち下さい……」


 女兵士達は、門番へ話をつけに行く為に城門へと向かって行ったので、馬車に残される。

 うーん、馬車で待っててもサンドラさんもメリサさんも全く起きる気配が無いし、少しこっちの王都を見てみるか。


 馬車の窓から見るだけじゃ、チェンツオーネの詳しい状況が分からなかったし。

 王都の栄え具合で、この国がどの程度の国なのか分かるし。

 馬車を降りて、少し街の方へ行く。



 ◇



「なるほどね……王都って言ってもこんなもんか」


 チェンツオーネの街を二十分程散策して、馬車へと戻ってきた俺は、見た感想を呟いていた。

 女兵士達は、まだ門番と話し合いが終わっていないのか、馬車へと戻ってきていないし、サンドラさんとメリサさんも全く起きる気配がないので、独り言を言うしか無かった。


 うーん、国の王都とか国の首都って建物が上に凄い高いイメージがあるんだけどな。

 チェンツオーネにあるほとんどの建物が平屋ばっかりで、基本的に二階建てが無い。

 元の世界のそこら辺の田舎ですら、もっと建物が高いぞ。

 役場とか無駄に四階建てだったりするし。


 よくばあちゃんが言ってたな、役場なんかに無駄に税金掛けおって! 二階建てで十分やろ! 膝痛いわ! って。


 逆に考えると国民の税金を無駄に使っていないって言えるのか?

 そもそも沢山税金を納められる程、人がいないってだけのオチだったりして。


 ぶっちゃけ、これが王都? って思った。

 あまりにも人通りが少なすぎて。

 道もところどころ、ヒビが入っていたりして、なんか田舎みたいに思えちゃうんだよ。


 兵士の質はセトロベイーナの圧勝だけど、発展具合はボルチオールの圧勝だな。

 カムデンメリーはもっと人で賑わっていたし、色んな店があった。

 チェンツオーネは、ファウンテン以下だろこれ。

 女王様が住んでいる城だけが、メチャクチャ浮いているよ。


「あー疲れた。すいませ~ん勇者様、後三十分くらい待ってろって言われちゃいました」


 疲れた様子で女兵士達の一人リベッネが、馬車へと戻って来る。

 残りの二人は戻って来なかった。


「あれ? リベッネさんだけですか?」

「やーん! 勇者様に名前で呼ばれちゃった! 疲れが吹っ飛ぶー!」

「はは……」


 やっぱり現実って残酷だな。

 こんなふざけた事を言っているような女が、ボルチオールの兵士より実力が数段上なんだから。

 しかも容姿はそこそこで、巨乳。


 良いなあ、人生イージーモードっすね。

 俺は異世界の女神の手違いで異世界召喚に巻き込まれた上に、ロクなサポートは受けれなかった。

 しかも、元の世界に戻るには魔王討伐しなきゃいけないという人生ハードモードの俺からしたらメチャクチャ羨ましいよ。


 あ、俺がイーリスにブチギレてぶっ殺したせいで、自分の手で人生ハードモードにしたんだった。

 ハードモードどころか、この二年間ベリーハードモードを超えたヘルモードでしたけどね。


 まあ……ここ最近は女神の加護が俺にも発動したお陰でマシにはなってきたけど、それも元クラスメイトが死んだお陰という。


「ふわあ……うるさいな……ってアレ? もう着いたの?」


 リベッネの大声によって、サンドラさんが目を覚ました。

 昨日のサンドラさんは酒を飲んでないから、目覚めがメチャクチャ良いな。


 失礼かもしれないけど、朝からこんなにキレイなサンドラさんは初めて見た。

 酒浸りのせいで、酒臭い上に顔がむくんでいたり、顔色が悪かったり、ゲロを吐いていたりなど、とにかく朝のサンドラさんは酷かった。


 何度でも言おう。

 一生断酒してくれ、サンドラさ……


「あー! ヤバい! 親書に涎垂らしちゃってた! か、乾かさなきゃ!」

「ええ……」


 ……前言撤回するわ。

 やっぱりサンドラさんはサンドラさんだ。

 どっか抜けてる。


「ゆ、勇者様? 丁度良かったみたい……ですね?」

「はは……」


 大丈夫か?

 これからこのメンバーで他国の女王様へ会いに行くんだぜ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る