第22話 勇者パーティー(役立たず達)、連行
「いやーグレイスさんが用意した馬車凄いねえ~私が寝ている間にカムデンメリーに着いちゃったよ」
「大丈夫なんですか? サンドラさんがファウンテンから離れて」
「大丈夫よ、メリサ。ジンくんが、サタンを一杯倒してくれたから、カムデンメリーや隣街からの応援の兵士で対処出来るみたい」
そう言ってサンドラさんは俺に笑顔を向ける。
数え切れない程のサタンを倒した甲斐があったな。
サンドラさんみたいなキレイな人に笑顔向けられるって。
本当にシラフのサンドラさんはキレイだぜ!
そのまま一生断酒して笑顔でいてくれ!
だが、すぐにサンドラさんの笑顔は消え、ケントとサラに冷ややかな視線を向ける。
「ケントくんとサラさんは、今すぐファウンテンに戻って貰うよ。もうアンリさんとニーナさんにはファウンテンに先に戻って貰ったから」
うわっ、怖っ。
サンドラさんってこんな顔もするんだな。
まあ、当たり前か。
ケント達に対して怒りや憎しみの感情が湧かない訳が無いよな。
「お、おい……ジン……サンドラさん何て言ってるんだ? 凄い怒ってるけど……」
「い、いつもニコニコしてる人が怒ってるよ……怖っ……」
ケントとサラは激怒するサンドラさんに怯えている。
おい、チビらすなよ。
下着姿なんだからすぐチビったのバレるぞ。
「ファウンテンにさっさと戻って来いだとよ。アンリとニーナはもう戻ってるらしいぞ」
「そ、そうか」
「別にそれは良いけど、この格好で戻るのは嫌! 何か着るもの!」
うん、
むしろ、この格好のままで帰らせた方が反省してる感あるだろ。
逆にそんな格好で! って感じでキレられるかもしれないけど。
「……ねえ、ケントくん、サラさんさ? 何を言っているの? 全然分からないよ? ふざけているのかな?」
サンドラさんが、腰に差している剣に手を掛け始める。
思わず俺もチビりそうになったぜ。
サンドラさんマジで怖いよ……。
まあ、今のケントとサラは異世界言語理解の女神の加護が無い状態だからな。
サンドラさんにケントとサラの話す言葉が通じないのは当然だ。
異世界言語理解はこの世界の人間の言葉を理解出来るだけで無く、俺達の元の世界の言葉、つまり日本語を話すだけでこの世界の人間と意思疎通が出来る能力。
その加護を俺に奪われた以上、もう意思疎通もこの世界の言語を読むことも書くことも一生出来なくなるだろうな。
俺が二年間、筋トレと雑魚モンスター狩りに勤しむハメになったのもこの加護が無かったせいだし。
いや、異世界言語理解の能力が無いと本当に何も出来ないからな。
この世界の人間とは話せないし、文字は読めないし書けないしで。
流石に我慢の限界が来て、ケルベロス討伐やっちゃったけど。
だって、手伝うから魔王討伐しようとか色々ケント達には言ったのに、一向にやる気が無いんだもん。
だから、本当にビックリした。
ブチギレて一人でケルベロス討伐した後に、ケントの知り合いの冒険者に声を掛けられた時に、そいつが話す言葉が理解出来るって事に。
二年経って、突然何故か俺にも異世界言語理解の女神の加護が発動するんだもん。
俺に女神の加護が突然発動したって事は何かあった事には間違い無いな。
例えば、女神の加護を受けた勇者パーティー二十八人の中の誰かが死んだとか。
イーリスが言ってたからな、君にはお詫びに、女神の加護を受けた勇者パーティーの子達が死んだら、死んだ子が受けていた加護が君の加護になるようにしとくから許してね? って。
結局、許す気になれずにイーリスから全部力を奪って、殺したんだけどな。
今でも、イーリスが死ぬ前の俺に対する恨み言は忘れられないね。
(「し、知らないから……め、女神の命乞いを聞かなかった事、こ、後悔すると良い……よ。き、君には最低限の加護も与えないから……な。ゆ、勇者パーティー二十八人の誰かが死なない限り、き、君はこの世界で地獄をみ……見続けるだろ……う」)
うーん今思い出しても、イーリスの逆恨みだとしか思えないわ。
忠告通り、二年間地獄を見ましたけどね。
この世界の連中やケント達勇者パーティーからもバカにされ続けて、惨めな思いをし続けたし。
だから、これは逆恨みだ。
ケント、サラ。
お前らもその地獄を味わえ。
お前ら
「あー! 本当反省してないんだね! もういい! ちょっと! この二人今すぐファウンテンに連れて帰って!」
あ、しまった。
俺が色々思い出してる間に、サンドラさんがとうとうケントとサラにブチギレちゃったよ。
話がずっと通じない状態で話していたのか。
サンドラさんに同行していたであろう兵士が現れてケントとサラを囲む。
「お、おい! これじゃまるで犯罪者じゃないか! ジン! 助けてくれ!」
「い、痛い! そんな強く縛らないでよ!」
話が通じない今の状態でそんな騒いでいたら、逃げようと抵抗していると兵士に思われているだろうな。
変にこの二人に助け船出したら、俺も兵士に捕まりそう。
うん、ここは。
「大人しく、連行されとけ」
笑顔で見送るとするか。
「そ、そんな……」
「ぐすっ……痛い……痛いよお……」
ケントとサラは無事、大勢のギャラリーに見られながら兵士達に連行されてファウンテンに戻るのだった。
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