第7話 するめ、スニーキングする2nd
さあて!最終戦にもつれこんできましたっス!
赤コーナー!プリンセスホテル最強の女!蝶野選手~!っス
白モクからサングラスをしたムキムキの女性が出てくる。
青コーナー!ほてる・座まんはったんの、、、えーっと、するめ選手~!
「何かしら登場のとき、コメントあるんじゃないんですか~><」
もちろん誰も彼女の声は聞こえていない。
「よっ!がんばれするめちゃん!」
家老がエールを送る。
あれ?おかしいっス。青から誰も出てこないっス。これは棄権ということでいいっスか?
「大丈夫だからスタートするといいよ。あの子は必ずいるからね」
よくわかんないっすけど、いいならスタートするっスよ!
はーい!最終戦!スタート!!!!
ぱあん。と乾いた音が会場に響く。
最終戦は迷路脱出ゲームっス。ゴールに旗が立っているっスので、先にゲットしたほうが勝ちっス。罠には気を付けるっスよ~!
するめは負けられない戦いに気合を入れた。
迷路は得意ではないが、罠は彼女の前では無意味だ、反応しない。
「おじいちゃーん!応援ありがと~!」
スタート地点で手をフリフリしている。
もう蝶野選手はスタートしていた。
さて。、ここからが彼女の本領発揮である。
落とし穴トラップ。穴が開かない。
後ろから岩が転がってくるトラップ!起動しない!
そう、彼女の前ではただの迷路であった。そして、
「するめちゃんよ。わしが手伝ってやろう。」
家老が助けに入った。
幽霊を使ったチート行為であるが、なあに、バレなければどうと言うことはない。
空からゴールを見つけてするめを誘導する家老。ここにきて、家老が役立っている。
幽霊ってなんでもアリなんだなあ。
「ありがと~おじいちゃん。ちょっと休憩しよう。はい、麦茶ですどうぞ。」
恐ろしくマイペースなするめ。会場の大画面では常に蝶野選手の映画スタントばりの大脱出を放送しているのに、こちらはほのぼのである。
あれ?これは、するめを中心に描くより、蝶野選手をメインに据えて書いたほうが面白いんじゃないかな?
さあ、蝶野選手!次のトラップは!爆発だっ!ぎりぎりをジャンプで避けていく蝶野選手!続けてきた落とし穴も、得意のパルクールで突破っス!解説の女将さん、これは圧倒的に蝶野選手が有利なんじゃないでしょうか?
「ええ、蝶野選手の身体能力はずば抜けていますね。ですが、ウチのするめも負けてはいません。」
いやいや!どこにいるんですかするめ選手!するめ選手専属のカメラ担当さんもお手上げだ~ッス。
するめはすでにゴールにいた。旗を取って、一服しているのだ。
「おじいちゃ~ん?女将のどこに惚れたんですか~?」
「むう。惚れたというか、昔会った女によく似ていてのう。」
蝶野選手ゴール!っス
会場は大歓声!よく生きてここまでこれた!マジかっけえ!ファンになりそう!などと声が上がっていたが、、、、
肝心の旗がない。
どよめく会場。
一人だけ、状況のわかる人間がいた。
「もうするめさんがゴールしてますよ」
勘十郎であった。
オーっと!どういうことっスか!?するめ選手はどこに…
旗をフリフリして「お~い!ここですよ~!」大声を張り上げるするめ。
探すカメラさん。するとなんと、蝶野選手の背後に隠れて見えなかったかのようにするめがいるではないか。
怖いな~。こわいな~。
しょ、勝負はするめ選手の勝ち~!っス!今までどこにいたんすか!全然わからなかったっス~!
もう一度会場が大歓声に包まれる。
するめは感動した。初めてこんなにたくさんの人に見てもらえたことを。
今この瞬間が、彼女のハイライトではなかろうか。割れんばかりの歓声、拍手。
「ありがとう~!ありがとう~!」するめは泣きながら観客に応える。
よかったねするめちゃん、もう存在感薄いなんて言わせない。みんなの心の中に、今日勝ったことが刻まれているよ。
余談だが翌日にはすべての人から今日の勝利は忘れ去られていた。悲しいねするめちゃん。
結果発表~!っス。ぱちぱち。
今回の勝負。2勝1敗!
ほてる・座・まんはったんの勝利っス~!
「勝ちました!勝ちましたよ!勘十郎さま!」
「愛の勝利。ヴィクトリー!」
「おじいちゃんありがと~!」
三姉妹それぞれが勝利を喜ぶ。
「それでは、賞品の贈呈っスよ。勘十郎クンと宿泊権っス。大事にするっスよ」
椅子に縛り付けられている勘十郎が贈呈される。
勘十郎に人権はないのか。自由に生きる選択権はないのか。
「ありがとうございます!「「「ありがとう!」」」
三人娘には涙が浮かんでいた。
続く
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