第6話 するめ、スニーキングする

私の名前はするめです。

3姉妹の末で、いつもお姉ちゃんたちの後ろについていってます。

だからか、どんどん影が薄くなって、今では誰も私のことが見えてないみたいです。

これはちょっとさみしいです。お姉ちゃんたちですら気づいてくれないんです。

誰でもいいから私を見て。ううん、だれでもよくない。気づいて私の王子さま。

いつか私を城に連れてって。


ある日、一人の青年が旅籠へ来た。黒髪細目、やせ型。遠目から見て、とっても普通な人だった。ちょっと弱そうとすら感じました。すずめお姉ちゃんが自分から売った喧嘩で男の人に絡まれたとき、一触即発だったところを止めてくれた。私は腰を抜かしてへたりこんでました。

ホントにお姉ちゃんは危なっかしい。大丈夫ですか?と、青年がお姉ちゃんに話しかける。とっても優しい笑顔だった。


「そちらのお嬢さんも大丈夫ですか?」


え?


青年は私を見て言った。

私が見えてる?


「立てますか?」

「え?あ。はい。」


手を取って起こしてくれました。

え?優しいかよおおおお。

ふぁあああ。いい人だあああ。


「あの…その…ありがとう、ござ、います」


あわわわわわ、どもっちゃいました><

これが勘十郎さまとの出会いです。



ある夜、するめは勘十郎の部屋に忍び込もうと試みた。

昼間だと、他の姉妹や仕事に邪魔されるばかりで、二人きりで話をしてみたいと思ったからだ。

これは一筋縄ではいかない。3姉妹がお互いをけん制するため、女将が勘十郎を守るため、トラップが仕掛けられているのである。

勘十郎がいる奥の座敷までの道のり。

まずはすずめが仕掛けた赤外線トラップ。難なくクリア。赤外線にひっかからない体質だ。

つばめが仕掛けた落とし穴。は、穴を踏んでも反応しない。

最後に女将が仕掛けたタライ。頭に当たってかあんと乾いた音が鳴り響く。

あまりの痛さにその場で悶絶するするめ。さすが女将。するめでもスルーできない罠であった。

今の音でたぶん3人に気づかれた。本来のするめの性格ならここで諦めるのだが、今日は違っていた。

強引に勘十郎の座敷まで到達。

中の様子をうかがう。。。


「ご家老さま、いい加減成仏してください。」

「そんな方法、知ってたらとっくに成仏してるわい。」


どうやら先客がいたようだ。

勘十郎さまと、、、誰かはわからないが話し込んでいる。


「もうすぐ息子がここにくるようだぞ。覚悟をしておくがよい」


何を覚悟しておくんだろう。


「私は無実です。ご子息様には帰っていただくようにお伝えください」

「それは無理な相談だ。わしは息子どもには見えないからのう」


するめのように見えない体質なのだろうか、勘十郎さまと話している相手が見えない。


ばたむ。


ベタな音とともに勘十郎の部屋の戸がするめの前のめりに耐え切れず倒れた。


「「「あ」」」


真っ白になって固まるするめ。流れる所作で刀を抜く勘十郎。


「なにやつ!」

「あわわわわわ~わた、し、です~。ごめんなさい~!」


あともう少しするめの反応が遅れていたら、斬られていたかもしれない。

【家老、斬っちゃったかも】から、【少女、斬っちゃった】に題名が変わるところであった。どうだろう、いっそ変えてしまうか?家老より少女斬っちゃったほうがキャッチーじゃない?ウケないかな?

え?ヒロイン斬っちゃダメ?


「なんだ、するめさんですか。何か伝言など、女将さんからですか?」

「あ、いえいえいえ、なんでもないです~。」


こんな夜分になんでもなくはないだろう。横で家老もポカンとしている。


「あ、え~と、お客様ですか?今お茶をお持ちしますね。」

「!するめさん、見えるんですか?」

「え?見えてないですよ?私みたく存在感薄い人がいるのかなと思って」

「お嬢ちゃん、ありがとう。お茶いただくよ~。」

「!飲めるんですか!?」

「あ、熱いお茶が苦手なら麦茶がありますけど」

「熱さの問題ではありません!」

「わしは猫舌だから麦茶がよいの」

「はい!麦茶にします。」


するめはどこからか魔法瓶をとりだし、こぽこぽとコップに注いでいく。


「どこから取り出したんですか?」

「乙女の秘密です~」


はい、おじいちゃんどうぞと家老の反対に向かって麦茶をススっと出す。

「ありがとの~」

「いいえ~」


朗らかな空気が部屋に漂うが、麦茶は減らなかった。

やっぱり飲めないんじゃないですか。


「聞いとくれお嬢ちゃん、わしはの、ここにいる勘十郎にられたのじゃ。」

「え~?そうなんですか?勘十郎さま、いい男ですもんね~。」

「サラッと間違いを吹き込まないでください!」


どうやらするめには正しく伝わっていないようであった。

するめと家老は周波数が近いのか遠いのか、意気投合してしまったみたいであった。


「武田のおうち大変ですね~。私、息子さん探してきますね!」


大変なのは勘十郎も同じなのだが、どういうわけかするめは摩守麿を探すと言い出した。

次回、ついに一同が出会う!予定!

続く!














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