新生スライムでダンジョン攻略!~魔王の打倒を目指し今、動き始める~

結城辰也

第1話 スライムになっちまったぁ!

 う。なんだか。周りがうるさいな。

 だれだ? 俺を呼んでいるのは?

 ふと目が覚めた。んと……ここは?


「やっと目覚めましたね」


 へ? 声のする方を向いたら――


「ぎゃああ!?」


 なんとそこには女ミイラがいた。

 うん? それにしてもなんだか俺自身に違和感が――

 あれ? 四肢ししが動かない? あれれ?


「貴方も呪われたのですね」


 おいおい。魔物になんだか悲しまれているぞ。俺。

 止めてくれ。哀れみの目線はしないでくれ。全く。

 にしても……どうして女ミイラの膝枕を俺がして貰ってるんだ?


「魔王は未だに倒されていないのですね?」


 え? 魔王? は!? 魔王だ! そうだ! 俺! 倒さなくちゃ!

 なんだ? この悲しみの連鎖は? 魔物と魔王はつるんでいるだろう。

 なのに女ミイラからは慈愛や博愛などが感じられる。なんでだ?


「おい! ヒルダ! もう止めろ!」


 え? だれ? うん? 首が動かない? あれ? 違和感しかない。

 辛うじて声のする方を見ると――


「ぎゃあ!?」


 二度目の悲鳴だ。なんとそこには骸骨男がいた。なんなんだよ? ここは?


わしもいるぞ」


 と急に老人が女ミイラの胸を貫通し俺の顔をのぞき込んできた。

 俺は余りの驚きの余りに気を失いそうだった。だけど――

 なんとか出てきた老人が実は幽霊だと理解すると不思議と怖くはなかった。


「あ! パルガス様! そこから出るは止めてください!」


 は!? そうだよな? 胸辺りから出てるもんな。って魔物だろ? 気にするのか。


 と、とにかくだ。ここは魔物と戯れている暇なんてない。仲間と合流しないと。

 うん? 駄目だ。四肢が動かない。身動きが取れない。なんだよ、これ。


「動きたいのですか。では……跳ぶように意識なさればいいかと」


 え? どうして俺が跳ぶ必要性があるんだよ? あーでも四肢がない感じがする。

 仕方がない。ここは跳ぶように――と。お? おお!? なんだぁ? この感覚は?


 って待てよ! 四肢がない? 跳ぶように動く? んん? もしかして――


「ようやく気付きましたか。そうです。貴方はスライムなんです」


 へ? 俺が……スライム? あの……青い物体の? はは。はははは。疲れてるのかな? 俺。


 ああ!? 思い出した!? そうだ。俺。確か魔王から呪いを受けたんだ最後に。

 って事はこれが魔王の呪いなのか。……嘘だろ? というか。仲間はどこだよ?


「仲間は?」


 気持ち的にはようやく踏ん切りが付いたが仲間が無性に気になった。大切な仲間なんだよ。俺にとっては。


「……残念ですがここに来たのは貴方のみです」


 嘘だろ? それって即ち俺以外の皆は……死んだって事か。嘘だ。俺だけが生き延びたのか。はは。


「申し遅れました。私の名はヒルダ。呪いを受ける前は元人間にして聖女でした」


 なるほどな。だから精神が整っているのか。それはそれは慈愛とかを優先するに決まっている。


「自己紹介か。……俺の名はアダム。元人間にして勇者だ。それもかなり酷い有り様の」


 うーん。さっきから気にしているっぽいな。自分の責任を持ち続けているのは素晴らしい事だ。


「ほっほーい。儂の名はパルガス。元人間にしてそれはそれは名高い大賢者だった」


 なるほどな。俺も含めて呪いを受けた元人間たちか。やはり元の姿に戻るには魔王を討伐するしかないのだろうか。


 もしそうなら剣のアダム。黒書のパルガス。杖のヒルダ。そして――すっぴん肌の俺。っておい! スライムが戦力になれるかぁ!?


 どうなってるんだ! これは! もう! うんざりだ! どうして俺が寄りによってスライムなんかに! この悪夢を覚ますには――


「ダンジョンを攻略するしかない! そして魔王を倒すんだ! それまで協力し合おう!」


 俺が言い放った。ヒルダとパルガスは悪い感じはしなかった。だけどアダムが不服そうだった。


「俺は反対だ」


 予想外の答えだった。どうしてなんだ? 少しでも前進して魔王に脅威を与えた方がいいに決まっている。なのに……どうして?


 俺はアダムの言葉にただひたすらに驚きが隠せないでいた。気がやや動転しそうだったがなんとか持ち堪えた。


 こうして俺はアダムを一緒に連れていくと心に決め彼の心の闇を暴こうとした。

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