かけら あつめて つめこんで
詩楽葉癒麻
第1話 クッキー
煙草より安く、煙草より美味しいお菓子は、高校生の私にとって手軽で低リスクで校則違反が楽しめる代物だった。
今日の持ち込んだものはカントリーマアム。ちょっと高めのそのクッキーの優しい味は、勉強に疲れた私の心を慰めてくれるはずだった。
「これ砕けてんじゃん」
「だって割れてるの食べるの嫌でしょ。ぼろぼろ零れるし」
「俺に食えってか! つーかなんで砕けんの? カントリーマアムってそういうタイプのお菓子じゃないじゃんケースに入ってるし」
こいつだ。ちょっと聞いてよーなどと話し掛けてきて、自然とよこせとばかりに手を出してきたくせに何様のつもりか。むかつく。
「ほらよ。これでいいんでしょ」
「いやいやいや、何で渡す直前に握りつぶすんですか。必要ないでしょ」
必要ないことあるか。これからあんたが話す内容を、聞かなきゃならいってのに。
「お前には本当優しさというものが足りないよ! 人がみんな少しずつ優しくなれば戦争なんか起こんないのにねってドラマで誰かが言ってた! ラブアンドピース大事!」
今は私の心の平穏のほうが大事なんだよ。大体誰かって誰だよ。
「美紀ちゃんを見習いなさい。あんな可愛いのに優しいし、可愛いし。ああ、ホントすごい可愛い!」
ほら見ろ。こうきたよ。だから話したくないんだっつーの。てか結局優しさより可愛さじゃねーか。
「なんでそこで睨むの」
鈍感。何で私はこんな男に。
「何でもない」
結局私は目をそらすことしか出来なくて、カントリーマアムを一つ手にとった。
もちろん奴に粉々のクッキーを渡すためだ。
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